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「連絡させていただきました」はビジネスで使わないほうがいい?正しい敬語表現
松田優Y.Matsuda
1:「連絡させていただきました」は正しい敬語だと思う?
仕事や日常生活で、「連絡させていただきました」という言葉を使う人もいるかもしれません。本人は正しい敬語として使っているつもりでも、間違った使い方をしている可能性があります。
そこで今回『MENJOY』では、20~40代の男女500名を対象に、独自のアンケート調査を実施。「連絡させていただきましたは正しい敬語だと思いますか?」という質問をしてみました。結果は以下のとおりです。
思う・・・245人(49%)
思わない・・・255人(51%)
今回のアンケートでは、「連絡させていただきました」という言葉は間違っていると感じた人が、半数をやや上回る結果となりました。それだけ、「連絡させていただきました」という言葉に違和感がある人が多いことがわかります。
2:「連絡させていただきました」を使わないほうがよい理由3つ
先述のアンケート結果からもわかるとおり、「連絡させていただきました」という言葉はなるべく使わないほうがよいでしょう。その理由を説明します。
(1)させていただくの使い方が間違っているから
基本的な問題として、「させていただく」という言葉の意味を正しく理解していないケースが考えられます。
させていただ・く
相手に許しを請うことによって、ある動作を遠慮しながら行う意を表す。「私が司会を―・きます」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「させていただく」という言葉は、「相手の許可を得ること」が前提となっています。さらに、文化庁が定めた方針によると、相手の許可に加えて「自分に恩恵がある」ことも、正しい意味が成立する要件となっています。
連絡は「こちらから自主的にするもの」であって、事前に相手の許可を得るケースはあまり考えられません。つまり、「連絡させていただく」という言葉は、たいていの場合、間違ったシチュエーションを想起させる表現になりやすいのです。
(2)慇懃無礼な印象を与えることがあるから
「させていただく」という言葉は、相手の許可があって成立する言葉です。相手の許可を得ていないシーンでうっかり使ってしまうと、失礼にあたるケースも考えられます。
例えば、相手から連絡がきたときに不在だった場合などに「お電話をいただいたようなので、ご連絡させていただきました」はアリですが、「○○の件は後日連絡させていただきます」と言うと、「こちらから連絡することを相手が承諾した」と勝手に決めつけてしまうことにつながります。
相手の考え方次第では「こちらは許可なんてしていないのに、失礼な人だ」と反感を抱かれてしまうおそれがあるので、特に目上の人への使用には注意が必要です。
(3)二重敬語と思われやすいから
似たような表現として、「ご連絡させていただきます」と言う人も見られます。敬語として成立しているように見えますが、これは「二重敬語」という、間違った表現なのです。
二重敬語とは、同じ種類の敬語表現を重ねることを言います。「ご連絡」も「させていただきます」も、自分をへりくだる表現である謙譲語にあたります。
現代では「ご○○させていただきます」「お○○させていただきます」という表現が、ひとつの謙譲語表現とみなされる傾向にありますが、「社会人なのに正しい日本語を使えない」というイメージをもたれる可能性もあるので、自信がなければ使わないほうがよいでしょう。
3:「連絡させていただきました」の正しい敬語表現や類語表現5つ
「連絡させていただきました」の代わりに使える表現は、どんなものがあるのでしょうか。
(1)ご連絡いたしました
「連絡させていただきました」の言い換えとしては、もっともポピュラーな例のひとつです。頭に「ご」をつければ、よりていねいな敬語表現となるので、上司など目上の人に使っても失礼にあたりません。
「ご連絡」と「いたしました」という組み合わせは、どちらも謙譲語にあたるため二重敬語という指摘もあります。しかし、「ご連絡いたしました」という言葉は長らくビジネスシーンで用いられており、現在は問題ないという考え方が定着しつつあります。
(2)ご連絡申し上げます
「ご連絡申し上げます」という言葉も、正しい敬語表現です。二重敬語に見えるかもしれませんが、「ご○○申し上げる」という、ひとつの敬語にあたります。目上の人に使っても問題ないうえに、とくにビジネスメールで使いやすい表現なので、覚えておきましょう。
ただし、使いやすいからといってシーンを考えずに使うと、失礼になる可能性があります。「ご連絡申し上げます」は自分をへりくだるときに使う謙譲語。なので、あくまで「ご連絡申し上げる」のが自分である場合のみ使いましょう。
(3)ご報告いたします
仕事に限らず、いろんなシーンで「ご報告いたします」という言葉がよく使われています。「報告」もなんとなく使っている人が多いと思われますが、改めて意味を調べてみましょう。
ほう‐こく【報告】
[名](スル)告げ知らせること。特に、ある任務を与えられた者が、その経過や結果などを述べること。また、その内容。「出張の報告」「事件の顛末 (てんまつ) を報告する」「研究の中間報告」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「連絡」とは若干異なりますが、類語として使える言葉であることがわかります。
例を挙げると、「調査の結果についてご報告いたします」「プロジェクトの進行についてご報告いたします」といった使い方があります。また、「○○の件でトラブルが発生したのでご報告いたします」というような「相談」の意味でも使われます。
(4)お伝えいたします
ビジネスシーンで第三者に伝言を頼まれたとき、「お伝えいたします」という表現を使うことがあります。取引先の人やお客様など、社外の人に伝える場合に使う表現であり、社内の人に伝えるときは使いません。
例えば、「○○さまにお伝えいたします」「○○社の担当の方にお伝えいたします」というように、伝言を依頼してきた相手より伝える相手を立てる必要があるときに使います。伝える相手が社内の人である場合、「○○に申し伝えます」というのが正しい表現です。
(5)お知らせいたします
「お知らせいたします」は、ビジネスシーンでも使いやすい敬語表現です。口頭はもちろん、メールでも社内外問わずよく使われる表現なので、使ったことがある人も多いと思われます。
メールの例だと、「○○の件についてお知らせいたします」「今後の予定についてお知らせいたします」というように、冒頭で使われるのが基本です。就職したてで敬語の扱いに慣れていないなど、敬語表現に自信がない人でも使いやすいので、この機会に覚えておきましょう。
4:まとめ
「連絡させていただきました」を正しい敬語と思って使っていたのに、間違った敬語表現と知って、驚いた人もいるかもしれません。言葉の正しい意味と使い方をマスターできれば、社会人としての知識とマナーを高められますよ。