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ブレイクスルーの意味は?ビジネスでの用例と壁を突破できる発想法
水野 文也F.Mizuno
1:ブレイクスルーの意味は?英語の言い方と例文
(1)ブレイクスルーとは?
「ブレイクスルー」という言葉は、響きだけで格好いいイメージがありますが、障害を新しい方法で突破すること。特にビジネスの世界で、なかなかうまく行かないものを、角度を変えてトライして実現した、停滞していたものに打開の道が開けたときに使う言葉です。
「イノベーション」という言葉とニュアンスが似ていますが、イノベーションはまったく新しいものを新しい発想で生み出すこと。そこに「障害を乗り越える」といった意味は含まれないので、そこが「ブレイクスルー」との違いです。
(2)英語の「breakthrough」に由来
ブレイクスルーは、英語の「breakthrough」に由来する言葉。「break」(破壊する)、「through」(通り抜ける)のふたつの言葉を合わせた単語です。
英語の例文を以下に示しました。
A breakthrough came out of thin air.(打開の道が突如開けてきた)
2:青色LEDの半導体も!ブレイクスルーによって生まれた画期的な製品
(1)青色LED
今でこそ、LED(発光ダイオード)というのは、当たり前のように使われるようになっていますが、赤色、黄緑色が開発された後、青色が登場し光の三原色がそろうまで、なかなか実用化に至りませんでした。
名城大学の赤崎勇教授のグループが、青色発光ダイオードの実現に絶対不可欠な高純度の窒化ガリウム(GaN)の結晶膜を、世界で初めて実現。それをもとに、当時、日亜化学に勤務していた中村修二教授が挑戦を重ね、苦心の末に実現させたのは、まさにブレイクスルーそのものといっていいかもしれません。
この功績により、赤崎教授、中村教授、そして天野浩名古屋大教授の3人は、2014年にノーベル物理学賞を受賞しました。
(2)ウォークマン
今でこそ、スマホなどを使って当たり前のように外出先でも音楽を聴くことができますが、「音楽を持ち運ぶ」というカルチャーは、ソニーの「ウォークマン」が1979年に登場するまで無かったのです。
当時、ソニーの盛田昭夫会長の肝煎りで開発した商品。「そんなもの売れっこない!」という社内の反対を押し切って発売し、世界的な大ヒット商品になった「ウォークマン」は、ブレイクスルーで生み出された画期的な商品だったといえるでしょう。
(3)お~いお茶
今ではペットボトルのお茶は、当たり前のように自動販売機で買って手軽に飲んでいますが、1985年に伊藤園が「お~いお茶」を発売するまで、お茶は「家庭や職場などで、煎れ立ての温かいものを飲む」ものでした。
お茶は酸化すると、色、味、香りが変化してしまいます。それを克服して、おいしいお茶をいつでも飲めるようにした「お~いお茶」も、ブレークスルーで誕生した商品といえます。
3:ブレイクスルーに必要な考え方
(1)既存のものを掘り下げて見つめ直す
例に挙げた青色LEDはこれにあたるでしょう。実現不可能と考えられていたものを、真摯に研究を続けて実現。これがなければ、LEDの実用化はありませんでした。
実験で目にした「おやっ」と思う現象をきっかけに新しい素材を発見する。これは物理以外の分野でも少なくありません。こうした地道な研究で得られた成果を実用化、量産化することで画期的な商品が生み出されることになります。
また、「ウォークマン」や「お~いお茶」のように、既存のものを、もっと便利にできないかと見つめ直すことも大切でしょう。テープレコーダーやお茶自体は、新しい商品ではなかったからです。
(2)逆転の発想
これまで、良くないとされていた方法を逆に試してみることで、改善の余地が生じることもあります。「押してもダメなら引いてみな」などと言われますが、逆転の発想も大事です。
例えば、アパレルメーカーのベネトンは、シーズンによって色の流行が異なるため、常に需要変動のリスクを抱えていました。そこで、製造工程において最初に固定していた染色を、最後に変更するブレイクスルーによって、リスクを軽減することに成功したという例があります。
(3)先入観を捨てる
ウォークマンの開発時にあった反対の理由は、再生専用のレコーダーなど売れるはずがない、というものでした。それまでのレコーダーといえば、録音と再生がセットになったものが当たり前だったためです。
盛田会長はそうした先入観を捨てて、「聞くだけ」のニーズがあると考えたのです。先入観に囚われて、思考停止に陥らないことが大切ですね。
4:まとめ
ブレイクスルーは、新しい発明や商品開発するといった壮大なものに限った話ではありません。普段行っている仕事や勉強に行きづまったとき、ちょっとやり方を変えてスムーズに行えるようになることも立派なブレイクスルー。より高みを目指すためにも、この考え方はとても大切だといえるでしょう。