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夢をあきらめ続けた私がミスコンに出て漫画家になれたワケ【第12話・前編】ーシンデレラになれなかった私たちー
毒島 サチコS.Busujima
case12:夢に選ばれず、夢をかなえた女性
名前:あんどうまみ(漫画家・イラストレーター)
日本のミスコンテスト「2012年度 ミス日本」において、準ミス日本を受賞。2015年(株)KADOKAWAコミックエッセイ大賞を受賞し、漫画家デビュー。コミックエッセイ「コミュ力低めでちょいオタな私が準ミス日本になるまで」が発売中。
漫画家になりたい!
私の小学生からの私の夢……それは漫画家になること。
「なぜ、漫画家になりたかったのに、ミスコンに出たの?」
そう思う人も多いと思います。
でも、この「ミスコン参加」が私の人生を大きく変えたのです。
引っ込み思案だった学生時代
学生時代、私はミスコンに出るような華やかで社交的な性格ではありませんでした。どちらかというとコミュ力低めで、引っ込み思案。みんなの前で話すと、顔が真っ赤になってしまうし、緊張してうまくしゃべることができないタイプ。
「もっと、みんなとしゃべれるようになりたい……」
そんな思いを抱えながら、みんなが校庭で遊んでいるのを教室の窓から眺め、ひとりで空想しては、ノートの余白に落書きばかりしていました。
自分の描く絵の世界の中では、私も校庭で友達と楽しそうに遊んでいます。紙の上なら、自分の思い描く世界を作り出すことができる……。
いつしか私は「漫画家になりたい」と思うようになりました。
夢をかなえるために
そして私は、夢をかなえるために絵を描き続けました。
登場人物とストーリーを考えて、それをひとつひとつ絵にしていく。自分の世界を作りあげるためには、膨大な時間がかかります。私は無我夢中で絵を描き続けました。
でも現実は、私が思い描いていた世界とは大きく違っていました。
高校生のときに、漫画家デビューの登竜門となる賞に応募するも、すべて落選。漫画の賞には、落選通知というものがありません。受賞作発表号を手にし、自分の名前がそこにないときの絶望感は、今も思い出すだけで胸が苦しくなります。受賞を手にするのは、私よりも何倍も絵がうまく、才能のある人たちでした。
「私よりもうまい人がたくさんいる」「どうせ私なんて……」
いつしか夢を追うことは苦痛に変わり「漫画家は、選ばれた人だけがなれる職業なんだ」と思うようになりました。
選ばれない日々
「私は、プロの漫画家にはなれない」
物心がついたときから目指していた夢をあきらめ、私は別の夢を探すことにしました。でも、漫画家以上の夢は、なかなか見つかりません。また、夢をあきらめたからといって、大好きな絵を描くことを急に辞めることもできません。
夢は夢のまま……そう割り切って、同人誌をつくってコミケに参加したり、WEBで自分のイラストを発表したりしながら、絵を描くことは趣味として続けていくことにしました。
そして夢は一旦置いておいて、せめて社会でひとりでも生きているようにと、目の前の大学合格を目標に、受験勉強に励んでいました。
「夢ではなく、目標なら、かなえることができるだろう」
そう自分に言い聞かせて……。
人生は選ばれないことの連続
でも、私は大学入試でも、結果を残せませんでした。第一志望の大学に落ち、滑り止めで入学した大学で4年間を過ごしました。
その4年後、「少しでも、自分の好きな漫画の近くで仕事をしたい」と目指した出版・マスコミ業界もことごとく落ち、希望とはまったく別の業種で働くことになったのです。
「人生は選ばれないことの連続」「夢はかなわないもの」
空想の世界を夢見ていた私は、目の前の現実を受け止めざるをえませんでした。
彼氏に言われたひと言
漫画家をあきらめて、趣味で絵を書きながら、仕事は仕事として頑張る……。現実を受け止め、その中で生きることを決意して、社会人として頑張り始めたころ、仕事先で知り合った男性との交際が始まりました。
やっと選ばれない人生から抜け出し、新たな一歩を踏み出せると思っていました。でも彼には、とても素敵な幼馴染がいました。モデルとして活躍するほどの美貌の持ち主で、テレビや雑誌にも出ていました。
「アイツは、本当にすごいよなぁ」
彼は彼女のことをとても誇らしく私に話してくれました。
でもある日、些細なことで喧嘩したとき、彼は「アイツに比べて、どうせマミは……」という言葉を漏らしたのです。それは、幼馴染と私の「比較」でした。
「私はどうせ……」
彼が、私を傷つけようとして言っているのではないことはわかっていました。でも、漫画家をあきらめ、大学受験と就職に失敗し、夢に選ばれない人生を送ってきた私にとって、彼女の存在は、大きなコンプレックスとなってふくらんでいきました。
コンプレックスの先に
それでも私は、彼に認められたかった。少しでも彼にとって自慢の彼女になりたいと、強く思ったのです。
「幼馴染のあの人には到底かなわないけれど……」
彼の幼馴染に近づきたくて、引っ込み思案な性格を直したくて、少しでも彼の自慢の彼女になりたくて、地元の読者モデルに応募しました。そして次第に、小さな仕事をもらうようになっていったんです。
訪れたチャンス
そんなある日、思いもよらぬ転機が訪れました。「ミス日本」に挑戦してみないか、というお話をいただいたのです。
当時、読者モデルをしていた「美人時計」というWEBメディアに「ミス日本」の推薦枠があり、そこからファイナリストとして出場できる、ということでした。
でも私は「自分がミス日本に挑戦するなんてありえない」と思いました。今まで一度も選ばれなかった人生。また、「選ばれる選ばれない」の土俵に立つのが怖い……。チャレンジしても、選ばれなくて落ち込むだけではないか……と。
そのときふと、ある言葉が脳裏に浮かびました。
「どうせマミは……」
それは以前、喧嘩をしたときに、彼が私に言った言葉でした。
でも、振り返ってみれば、「どうせ」からはじまる自分に対しての諦めの言葉は、私自身に対して、心の中でつぶやいていた言葉だったのかもしれない。
「どうせ漫画家になれない」「どうせ挑戦しても報われるはずがない」「どうせ私なんて……」
もしこの挑戦から逃げたら、これからもずっと、「どうせ」と自分に言い聞かせ続ける人生を送ることになるのかもしれない……。「ミス日本」に出場することがきっかけで、彼の「自慢の彼女」に近づけるかもしれない。何よりも、選ばれなかった人生を、変えられるかもしれない。
そして私は、「ミス日本」に参加を決めました。
―後編へ続くー
【今回のゲスト】
海道岩見沢市出身。北海道を中心に活動するローカルタレント、漫画家、エッセイスト。2012年「ミス日本コンテスト」に出場し準ミス日本を受賞。著書に「コミュ力低めでちょいオタな私が準ミス日本になるまで」(2015年、KADOKAWA)がある。若い女性を中心に人気のイラストを紹介したインスタグラムのフォロワー数は13万人を超える。
【筆者プロフィール】
愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「MENJOY」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。
【前回までの連載はコチラ】
妄想恋愛ライター・毒島サチコが書く「選ばれなかった人」の物語。【連載】シンデレラになれなかった私たち
「どうして私と別れたの?」元彼が語ったサヨナラの理由【第1話・前編】
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次回:5月2日土曜日 更新予定
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