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カオナシって結局なんだったの?知るともっと面白くなる『千と千尋の神隠し』

月島もんもん

月島もんもんM.Tsukishima

目次

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1:みんな大好き!『千と千尋の神隠し』

人気作の多いジブリ映画。どの作品が人気なのかを調べるべく、『MENJOY』が独自のアンケートを実施。

全作品をピックアップし、20代~40代の男女500人「ジブリ映画の中で好きな作品は何ですか?」という質問をして、3つまで答えてもらいました。

結果は以下のとおりです。

1位:となりのトトロ・・・182人(36.4%)

2位:天空の城ラピュタ・・・155人(31.0%)

3位:風の谷のナウシカ・・・146人(29.2%)

4位:千と千尋の神隠し・・・134人(26.8%)

5位:魔女の宅急便・・・105人(21.0%)

以下、「もののけ姫・・・77人(15.4%)」「耳をすませば・・・58人(11.6%)」「火垂るの墓・・・56人(11.2%)」「紅の豚・・・42人(8.4%)」「ハウルの動く城・・・37人(7.4%)」「崖の上のポニョ・・・31人(6.2%)」と続きます。

人気ナンバーワンは『となりのトトロ』のようです。子どもから大人まで楽しめる、ほのぼのほっこりするストーリーで、夏になると毎年のようにテレビでも放送されるので、多くの人が親しんできた作品。今回取り上げる『千と千尋の神隠し』は4番人気。こちらもたくさんの人に愛されている作品だとわかります。

2:カオナシとは…正体とセリフから考察するカオナシの意義

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それではさっそく、『千と千尋の神隠し』に登場するカオナシの正体について、考察していきましょう。映画を中心に、1000本以上ものさまざまな物語に触れてきたという草薙つむぐさんにお話を伺いました。

(1)異物

草薙:『千と千尋の神隠し』に登場する「油屋」は、神さまが訪れて汗を流していきますが、カオナシは別。招かれざる客として描かれています。従業員からも相手にされていません。そのことから、従業員でも神さまでも人間でもないと分かります。

要するに、異物の存在。そこに存在してはいけないものと考えることができます。油屋側からすると、関わりたくない存在かもしれませんが、しかしカオナシ側からすると、それってとても悲しいですよね。存在しているのに、それを否定されているのですから。

(2)自己表現ができない

草薙:カオナシはお面のようなものをつけ、全身が黒い、またはカラダを黒い服のようなもので包んでいるという姿です。表情もなく、どんなカラダをしているのかも謎。要するにこれは特定の姿をもたず、感情を表に出すことができない存在と推測できます。

まるで生まれたての赤ん坊のようですよね。赤ん坊は泣くことで自己表現ができますが、カオナシはそれすらもできないか、その方法を知りません。誰かと関わりたいと思っても、どうすればいいのかわからない存在として描かれています。

(3)コミュニケーションができない

草薙:カオナシには言語能力がないことも特徴的。カオナシが登場したとき「ア」という音を出すことしかできませんでした。

他人を飲み込んでいくことで、飲み込んだキャラクターの声を使ってコミュニケーションができるようになっていきますが、これは他人を媒介しないとコミュニケーションができないと推測できます。誰かの表現方法を借りないと自己表現ができない存在といえるわけです。

誰かと気持ちを共有したいと思っても、それができないとも考えられます。

(4)相手の欲しいもので解決しようとする

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草薙:相手をよく観察していて、相手の欲しいものを使って人の興味を引こうとするのも特徴的。例えば、千尋に対して、最初は薬湯の札で興味を引こうとし、次は砂金によって従業員の興味を引こうとします。カエルの登場人物は、その砂金に飛びついて飲み込まれてしまいましたが、「欲しくない。いらない」と言った千尋は飲み込まれませんでした。

逆にいえば、カオナシは自分の魅力ではなく、相手の欲しいものでしか他人の興味を引くことができないのです。もしかしたら、砂金にしか興味を示さない周りの人たちがカオナシを横暴な客にしてしまっているのかもしれません。

ちなみにこの砂金のシーンは、千尋の両親が「いいわよ。そのうち来たら、お金払えばいいんだから」と言って店主がいない店の料理を食べ始めてしまうシーンとリンクします。

お金を払えば無礼が許されるという考え方は、現代人を象徴しているのかもしれません。

(5)思いどおりにならないと暴れる

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草薙:思いどおりにならないことがあると暴れまわって手がつけられなくなるのも特徴的で、まるでわがままをいって相手を従わせようとするかのような態度を取ります。

お金で解決できないことを知ると、他にどうやって千尋の関心を引けば良いのか分からず、苛立っているかのようです。

誰からも認めてもらえず、物でしか他人の興味を引けないとなると、鬱屈した感情が溜まっていくはず。

その感情をうまくコントロールして発散するのが大人なのだとすれば、カオナシはまだそれを知らない子どもとも考えられます。

(6)結論

草薙:以上のことから、カオナシは誰かに必要とされたいだけの存在と考えることができるでしょう。

雨の中に立っているカオナシに「あの、そこ濡れませんか?」と千尋が優しく声をかけるシーンがありますが、カオナシにとっては損得勘定を抜きにして、存在を認めてくれた相手が千尋だったのかもしれません。

そんな相手の喜ぶ顔がみたいと思って、カオナシは千尋を執拗に追いかけ回してしまったのでしょう。「おまえはここにいな。あたしの手助けをしておくれ」と声をかけた銭婆のもとに嬉しそうな雰囲気で残ったのも、この理由からだと考えられます。

このカオナシの気持ちが理解できたのだとすれば、きっとあなたの心の中にもカオナシが存在しているのではないでしょうか。

3:知るともっと楽しめる『千と千尋の神隠し』トリビア

それでは今度は、『千と千尋の神隠し』を楽しめるトリビアについてご紹介します。

(1)千尋の家族が乗っている車はアウディ

草薙:『千と千尋の神隠し』の冒頭シーンで千尋と家族が乗っている車は「アウディA4 2.4クワトロ(初代モデル)」だといわれています。映画を見てみると車のエンブレムがアウディのものになっていることが確認できるでしょう。

(2)露店の料理はバーワン

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草薙:千尋の両親が 食堂の商品を食べて豚になってしまうシーンがありますが、そこにゼリー状の料理が登場します。これが台湾に実在する「肉圓(バーワン)」であると考える人が多くいます。実際にそれをネットで検索してみると、そっくりと言えるほど似ています。

(3)千尋は名前を間違えている

草薙:千尋の本名は「荻野千尋」です。しかし、湯婆婆との契約のときに千尋が書いた自分の名前は「荻」の火の部分が犬となっており、明らかに間違えています。これは制作スタッフのミスではなく、そういう設定なのでしょう。

(4)魔女の宅急便のジジ

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草薙:『千と千尋の神隠し』には『魔女の宅急便』のジジが登場するシーンがあります。それは、坊がいる部屋。よく探してみると入口近くのクッションにジジと思われる黒猫が描かれているんです。

(5)四季がない

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草薙:『千と千尋の神隠し』の世界の油屋では四季というものがない設定となっているようです。それがわかるのが、作中に登場する花たち。「紫陽花」「ツツジ」「梅」「椿」と同時に咲くことがない花が咲いています。

(6)かなりの日数が経っている

草薙:『千と千尋の神隠し』の世界ではたった数日しか経過していないように描かれていますが、実はかなりの日数が経過していると考えられます。

ドロドロとした河の神様を救った夜は満月だった月ですが、その後、銭婆の家を訪れたときには上弦の月として描かれています。上弦の月の月齢は、新月(1日)を経てから7日程度。それを考えると、20日程度は経過していると考えられます。

4:カオナシは現代人の象徴?

今回は『千と千尋の神隠し』についてご紹介しました。カオナシはネット内で「現代の若者」の象徴と考えられているようですが、資本主義社会に生きる「現代人」の象徴であることは想像に難しくないでしょう。

しかし「若者」という部分には疑問が残ります。あなたはカオナシの正体はいったい何だと思いますか?

【取材協力】

草薙つむぐ・・・書店員の経験から今までに触れた映画や小説などは1000タイトル以上。またスポーツ選手から芸能人まで幅広い人脈を持ち、恋愛コラムニストからも恋愛相談を受けた経験を持つ。手相占い師としても活躍中。