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薫陶とは?社会人なら知っておきたい「薫陶」の意味や使い方・例文を紹介
松田優Y.Matsuda
1:「薫陶」の読み方や意味・類義語は?英語で言うと……
「薫陶」という言葉の意味をよく知らない、もしくは読めないという人もいると思われます。この機会に、正しい読み方と意味をマスターしておきましょう。
(1)「薫陶」の読み方や意味
まず、薫陶の正しい読み方と意味を辞書で調べてみましょう。
くん‐とう〔‐タウ〕【薫陶】
[名](スル)《香をたいて薫りを染み込ませ、土をこねて形を整えながら陶器を作り上げる意から》徳の力で人を感化し、教育すること。「薫陶のたまもの」
「しかし若い生徒を―するのは中々愉快なものですよ」〈野上・真知子〉
出典:デジタル大辞泉(小学館)
薫陶とは、指導者の徳をもって人を感化させることを表す言葉です。
あれやこれやと厳格な指針を示して教え込むのではなく、あくまで自分自身の「徳」の力で教育することが本来の意味。行動力だけではなく、精神面も含めてじっくりと教育するという意味が込められています。
(2)「薫陶」の語源
先述の辞書の内容から、薫陶の語源は陶芸であることがわかります。
「薫」は香りを焚きこむこと、「陶」は陶器をつくることを表現しています。陶器は、土に香りを焚きこみながら形を整えて、じっくりと時間をかけて作りあげます。
その工程が、徳の力をもって人を育成する様子と似ていることから、「薫陶」という言葉が生まれたのです。
(3)「薫陶」の類義語
薫陶に近い意味をもつ言葉をピックアップしてみました。
そのうちのひとつが「感化」です。
かん‐か〔‐クワ〕【感化】
[名](スル)考え方や行動に影響を与えて、自然にそれを変えさせること。「兄の感化を受ける」「映画に感化される」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
実際に指導するのではなく、考え方や行動から影響を受ける様子が薫陶と似ています。
「教育」も、薫陶の類語と言えます。
きょう‐いく〔ケウ‐〕【教育】
[名](スル)
1 ある人間を望ましい姿に変化させるために、身心両面にわたって、意図的、計画的に働きかけること。知識の啓発、技能の教授、人間性の涵養 (かんよう) などを図り、その人のもつ能力を伸ばそうと試みること。「教育を受ける」「新入社員を教育する」「英才教育」
2 学校教育によって身につけた成果。「教育のある人」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
教育と聞くと勉学を連想するかもしれませんが、人間性や技能を育成する意味もあります。
人間性や精神面に寄った類語として、「啓発」も挙げられます。
けい‐はつ【啓発】
[名](スル)《「論語」述而の「憤せざれば啓せず、悱 (ひ) せざれば発せず」から》人が気づかずにいるところを教え示して、より高い認識・理解に導くこと。「彼の意見には啓発された」「自己啓発」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
これまで気づかなかったところをさらに高めるという意味があり、薫陶に似た意味をもっています。
(4)英語で言うと……
薫陶を英語で表現すると、3つの単語が使われるケースが多いです。特に多く使われるのが「education」で、薫陶のほかには教育・教化・育英といった意味も含まれます。
「discipline」という単語が使われることもあります。薫陶・修行といった意味から、懲戒・懲罰といったペナルティ的な意味でも使われます。主に「規律」を示す単語です。
「training」も同様の意味をもちます。薫陶以外には研修・養成・育成といった、文字どおり「鍛える」という意味が強いです。
2:例文でわかる!「薫陶」の正しい使い方5
「薫陶」という言葉になじみがない人のために、正しい使い方を5つピックアップしました。
(1)薫陶のおかげです
薫陶を受けたことに対する感謝を示すとき、もっともシンプルに用いやすいのが「薫陶のおかげです」という表現です。
上司や先輩相手にシンプルすぎると感じたときは、「ご薫陶のおかげです」と言い換えるといいでしょう。頭に「ご」をつけるだけで、丁寧な表現になるので覚えておくと安心です。例えば、以下の例文があります。
「ここまで成長できたのは、先輩によるご薫陶のおかげです」
「○○さんの薫陶のおかげで、ここまでやってこられました」
(2)薫陶を授かる
主に目上の人が相手のとき、「薫陶を授かる」という表現も使えます。
授かるという言葉には、「金銭に変えられない、大切なものをいただく」という意味が含まれます。「子どもを授かる」という表現がよく使われますが、同様に薫陶もお金では買えない大切なものと言えるでしょう。
相手の教養や所作をわけていただいて、自分自身の成長に活かすという意味にもつながります。例を挙げると、このような文になります。
「○○先生から薫陶を授かる機会があった」
「薫陶を授かったことは、私にとって人生の糧となります」
(3)ご薫陶に感謝申し上げます
丁寧な表現が望ましいシーンでは、「ご薫陶に感謝申し上げます」という表現を使うといいでしょう。
いままで薫陶をいただいてきたことに感謝を述べると同時に、相手に敬意を示すことで、より丁寧さを表します。目上の人にも使えるので、この機会にマスターしておくことをおすすめします。例文を挙げると、以下のように使います。
「これまでいただいたご薫陶に感謝申し上げます」
「この場をお借りして、これまでのご薫陶に感謝申し上げます」
(4)薫陶の賜物です
「努力の賜物」という表現を聞く機会もあると思われます。これと同様に、「薫陶の賜物」と表現することもあります。
ここで、賜物とはどういう意味なのかおさらいしましょう。
たま‐もの【▽賜/▽賜物】
1 恩恵や祝福として与えられたもの。たまわりもの。「水は天からの―」
2 あることの結果として現れたよいもの、または事柄。成果。「努力の―」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「薫陶の賜物」とは、薫陶によって技術面や精神面でよい結果が出たときに使う表現です。薫陶を受ける前に使うのではなく、結果を表しています。例文を挙げると、このような使い方があります。
「親からの薫陶の賜物です」
「この成功は、皆様からいただいたご薫陶の賜物です」
(5)薫陶を与える
「薫陶を与える」という表現もありますが、使うときは注意が必要です。
「自分が第三者に薫陶を与える」という使い方をすると、自分自身がすぐれた徳をもつ人間だと表現することになります。相手次第では「うぬぼれている」と思われてしまうため、自分に対して使うのは避けましょう。
薫陶を与えるのが第三者であるときに用いるのが、正しい使い方です。例えば、以下のような使い方があります。
「○○さんの行動は、後輩に薫陶を与えている」
「○○先生の教えは、多くの生徒に薫陶を与えるものだ」
3:「薫陶を受ける」の使い方と例文3つ
「薫陶を受ける」という表現は、特に多く使われています。主にどんな使い方があるのでしょうか。3つの例文を見ていきましょう。
(1)「自分が」○○から薫陶を受ける
もっともよく使われる機会が多いのは、自分が薫陶を受けるときです。先述の「薫陶を授かる」も、「薫陶を受ける」と似た意味で用いられます。
自分のスキルアップの面で薫陶を受ける機会が多いと思われます。技術や教養以外にも、精神面での成長があったときに使うといいでしょう。具体的には、以下のような使い方が挙げられます。
「先輩から薫陶を受けることで、自身のスキルアップにつながる」
「家業を継ぐために、父から薫陶を受けた」
(2)「第三者が」○○から薫陶を受ける
薫陶を受けるのが自分ではなく第三者である場合も、「薫陶を受ける」という表現が使えます。意味はほぼ同じで、目上の人や徳のある人に感化された人びとを表す言葉として使うのが基本です。
この使い方には、注意点があります。先述の「薫陶を与える」と同じ理由から、この表現で触れる人はいずれも第三者であることが前提なので、間違えないようにしましょう。例えば、以下のような使い方をします。
「新人社員が先輩から薫陶を受ける」
「研究の権威である教授から、多くの学生が薫陶を受けた」
(3)薫陶を賜る
ビジネスなど、よりかしこまったシーンで使うとき、「薫陶を賜る」という表現もできます。目上の人などから薫陶を受けたとき、とくに丁寧な表現として使います。
口頭での会話はもちろん、メールや書類でも使うことがあります。マスターしておけば、社会人としてのスキルや印象アップにも繋がります。例としては、以下のように使うといいでしょう。
「○○先生から薫陶を賜ることは光栄なことです」
「皆様から薫陶を賜ったことに、心よりお礼申し上げます」
4:まとめ
「薫陶」という言葉はあまりポピュラーではありません。しかし、正しい意味や使い方をマスターできれば、社会人としての教養が磨かれます。ポピュラーな表現でないからこそ、いまのうちにマスターして周りの人と差をつけましょう。