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送付させていただきますがおかしい理由は?正しい表現と返事の伝え方

松田優

松田優Y.Matsuda

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目次

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1:送付させていただきますは日本語として正しい?

まず、「送付」の正しい意味を調べてみましょう。

そう‐ふ【送付】

[名](スル)送り届けること。送りわたすこと。「願書を事務局に送付する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「送付」という単語そのものが、相手に物を送り届けるという意味をもっています。続いて、「させていただく」という言葉の意味を調べてみましょう。

させていただ・く

相手に許しを請うことによって、ある動作を遠慮しながら行う意を表す。「私が司会を―・きます」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

つまり、「させていただきます」という表現は、行動するにあたって相手の許可を得るときに使う敬語です。

実は、「させていただく」という言葉の方針は、文化庁によって定められています。事前に相手から許可を得ており、自分にもメリットがある場合のみ、正しい日本語として成立します。

相手の許可に関係なく送付する場合は、「送付させていただく」という言葉の成立条件を満たさないので、適切な表現に言い換えたほうがいいでしょう。

2:書類・資料を送付するときの敬語表現・例文3つ

「送付いたします」がふさわしくないシーンでは、どのように言い換えればいいのでしょうか。代わりに使える敬語表現と例文を3つピックアップして解説します。

(1)お送りいたします

「お送りいたします」は二重敬語と思われがちですが、正しい表現です。しかし、この場合の「いたします」はひらがなが正しい表記であり、漢字で「致します」と書くのは誤用なので注意が必要です。

例文を挙げると、以下のようになります。

「○○の納品書をお送りいたしますので、ご確認をお願いいたします」

「今回のプロジェクトに関する資料をお送りいたします」

(2)添付いたします

添付ファイルつきの電子メールを送信する場合、「添付いたします」という表現を使うこともできます。この表現が使えるのは、あくまで電子メールで送信する場合に限られており、物を送るときにはふさわしくない表現なので覚えておきましょう。

おもに、以下のような例文が挙げられます。

「○○の見積書を添付いたしますので、ご確認をお願いいたします」

(3)送付いたします

「送付させていただきます」が限られたシーンのみ使えるのに対して、「送付いたします」は相手の許可の有無に関係なく使える表現です。一方で、そのままの表現だと厳格すぎる印象をもたれる可能性もあるため、「ご送付いたします」と、よりていねいな表現を使うこともあります。

実際には、このような使い方ができます。

「打ち合わせに必要な資料を送付いたします」

「先日ご注文いただいた商品をご送付いたします」

3:相手に送付して欲しいとき・送付を受け取ったときの返事の仕方5つ

ここまで、自分が相手に送付するときの表現を解説してきました。今度は相手に送付をお願いするときの表現と、返事の仕方の例をご紹介します。

(1)お送りいただけますでしょうか

表現に困ったら、「お送りいただけますでしょうか」と伝えればまず問題はありません。実際にビジネスシーンでの会話でよく使われており、敬語としても正しい表現です。目上の人や取引先の相手にも使えるので、ぜひ覚えておきましょう。

具体的な例としては、「○○の資料をお送りいただけますでしょうか」と質問するような意味で使います。

(2)ご送付なさってください

「ご送付なさってください」は、あまり聞かないかもしれません。しかし、敬語として間違いはありません。「なさってください」とは、相手の行動に対する敬語です。

「ご送付ください」と表現することもありますが、目上の人や取引先の相手に使う言葉としてはシンプルになりすぎるので、「ご送付なさってください」と言うほうが無難です。

例えば、「恐れ入りますが、○○年○月○日までにご送付なさってください」という使い方があります。

(3)ご送付いただきますようお願い申し上げます

「ご送付いただきますようお願い申し上げます」という表現は、かしこまったシーンで使うといいでしょう。目上の人や取引先の相手など、ふだんより失敗しにくい場面で使えば、よりていねいな印象がアップします。

例としては、「○○に関する資料をご送付いただきますよう、お願い申し上げます」というような、ていねいさが求められるシーンが挙げられます。

(4)ご送付いただき誠にありがとうございました

相手から送付を受け取ったときの返事の仕方も、誤用を避けたいですよね。具体的に、どうやって返事をするのか、例文をピックアップしました。

難しい敬語に自信がなければ、「先日は○○に関する資料をご送付いただき、誠にありがとうございました」というシンプルな表現でかまいません。相手にも伝わりやすいですし、失敗を避けやすいという点でもおすすめです。

(5)ご送付いただきました○○を拝受しました

シンプルな表現より、ていねいな表現が求められるシーンもあります。取引先の担当者など、とくに失礼を避けたいときは、返事の仕方にも注意を払いましょう。

例としては、以下のような内容を添えるといいでしょう。

「先日ご送付いただきました商品のサンプルを拝受しました。このたびはご対応いただき、誠にありがとうございました」

「拝受しました」とは、目上の人から自分が物を受け取ったときに使う敬語です。「拝受いたしました」という表現も敬語として使われていますが、正しい敬語ではないので注意しましょう。

4:させていただきますが使える場面・例文5つ

先述のとおり、「させていただく」という言葉を正しく使えるシーンは限られています。そこで、「させていただきます」が正しく使えるシーンと例文を見ていきましょう。

(1)出席させていただきます

自分にメリットがあるイベントなどへの参加許可が必要なときには、「出席させていただきます」という表現が使えます。

たとえば、勉強会やシンポジウムなどの出欠確認で「○○に出席させていただきます」と返答する場合が該当します。また、招待された結婚式に出席する場合は、返信はがきに「慶んで出席させていただきます」と書き添えます。

(2)利用させていただきます

共同の備品や場所など、利用する前に許可が必要な場合は「利用させていただきます」と確認を取ります。「資料のコピーを取りたいので、コピー機を利用させていただきます」とか「研修会を行うため、大ホールを利用させていただきます」といった、自分にメリットがある利用方法で使われます。

備品や場所といった実物の利用でなくても、「利用させていただく」を使います。例えば「○○のプランを利用させていただきます」というように、さまざまなシーンで使われる言葉です。

(3)変更させていただきます

自分の都合により、相手に影響するような変更点が生じたとき、「変更させていただきます」とことわりを入れることが多いでしょう。

打ち合わせの時間変更を例に挙げると、自分は時間の余裕ができるけれど、相手の許可を取る必要があります。この場合、「恐れ入りますが、諸般の事情によって打ち合わせの時間を変更させていただきますが、よろしいでしょうか?」など、申し訳ないという気持ちを添えつつ確認を取りましょう。

(4)検討させていただきます

ビジネスシーンに限らず、その場で決断することが難しいことも多いと思われます。こういうときは、「検討させていただきます」と言って、決断までの時間を融通してもらいましょう。

例えば、なんらかの商品の購入をすすめられたとき、「この場では判断できかねますので、いったん検討させていただきます」と返事をすれば、相手も待つかどうか判断ができます。考える時間が伸びるのは、自分にとってもメリットとなります。

(5)処分させていただきます

会社の備品が壊れてしまったとか、商品として保管している飲食物の賞味期限が切れてしまったなど、自分ひとりの判断で物を処分できないシーンもあると思われます。使えなくなった物を早めに処分するのは、自分にとってもメリットになります。

「傷んだパイプ椅子を処分させていただきますが、よろしいでしょうか?」とか「商品棚に陳列されていた牛乳の賞味期限が過ぎているので、処分させていただきます」という使い方があります。

5:まとめ

「送付させていただきます」という言葉を正しく使っていたつもりが、実は間違っていた……という人もいるかもしれません。正しい言葉を覚えることは、ビジネスに限らずさまざまなシーンで役に立つので、この機会にマスターしておきましょう。