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「させていただく」の正しい使い方知ってる?言い換え表現と注意点
大山奏K.Ohyama
1:させていただくの意味は?
ビジネスの場面で一般的に使われている敬語表現の中には、使い方によっては間違いになるものも多々あります。
その中でもよく話題になる「させていただく」という表現。これは相手に許可をとってやらせてもらうことの敬語です。
2:させていただくの正しい使い方・例文4つ
文化庁が発表した敬語の指針の中によると、
「(お・ご)……(さ)せていただく」といった敬語の形式は、基本的には、自分の側が行うことを、ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い、イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。
とあります。これを前提に、「させていただく」の正しい使い方を見てみましょう。
(1)貴重な資料を特別に見せてもらう
たとえば歴史的な資料を誰かが所有していて、それを普段は一般に公開していないことを知っていながら、見せてほしいと思ったときには「見せていただきたいのですが……」という表現を使うことができます。
相手の許可がないとできず、見ることであなたの知識や経験が増えたり、研究の参考になったりするからです。
(2)会議に出席する
自分が呼ばれていなかった会議に出たいことを上司に伝えた結果、「出席してもいいよ」と言われて出席する場合には、「本日、上司の許可得て出席させていただきます」と言えます。
普段の会議で、当然出席すべき会議の場合には「させていただく」は使えませんが、このように特別な状況下では使えることがあります。
(3)番号を控えさせていただく
役所などに行って身分証明書を見せたときに、「番号を控えさせていただいてもよろしいでしょうか?」なんて言われたことはないでしょうか。
この場合も、相手はあなたの許可を得て番号を控え、その結果なんらかの手続きをつつがなく進行させることができるという恩恵を受けています。同じように、誰かの本や資料などのコピーをとりたいときにも使えます。
(4)早退させていただく
仕事をしていたけれど、急に体調が悪くなって仕事がこれ以上続けられなくなることもあるでしょう。そんなときには「早退させていただきたいです」と言いますよね。
上司の許可をとって、早退させてもらいゆっくり休むという恩恵を得られるため条件を満たしています。
3:させていただくの言い換え表現
「させていただく」を使いたくなったら、まずは「いたします」に言い換えができないか試してみましょう。多くの場合「○○いたします」でも不適切な言い方にはなりません。
たとえば「○○を紹介させていただきます」なら「○○を紹介いたします」、「電気を消させていただきます」なら「電気を消します」など。
4:させていただくを使うときの注意点5つ
「させていただく」はややこしい条件下でしか使えないうえ、使うときにはかなり注意が必要です。
(1)二重敬語にならないように
「させていただく」という言葉は、これ自体が謙譲語です。そのため、ほかの謙譲語と一緒に使うと二重敬語になってしまいます。「拝見させていただく」「お伺いさせていただく」「拝聴させていただく」などは誤りなので使えません。
(2)冗長表現にならないように
余分な言葉がたくさん入っていて、相手に言いたいことの意図が伝わりにくい文章のことを冗長表現と言います。
「させていただく」を使うと冗長的になりやすいという特徴があるので、「します」で置き換えられる場合には、そちらを使ってシンプルに表現したほうがよい場合が多いです。
(3)「さ入れ言葉」を使わないように
さ入れ言葉とは、本来「さ」を入れなくていい部分にまで「さ」を入れてしまうことを言います。「させていただく」を使うときには余分な「さ」が入りやすいので気をつけてください。
たとえば「行かさせていただきます」「手伝わさせていただきます」「聞かさせていただきます」などです。
(4)いただくを漢字でかかないように
「させて頂く」と「いただく」を漢字で書いてしまうのもNGです。「させていただく」の「いただく」は補助動詞といって、動詞について補助的な意味を与える言葉のことを言います。
補助動詞は基本的に漢字では書かず、ひらがなで表記するという決まりがあるので注意してください。
(5)使いすぎないように
「させていただく」という表現は、使いすぎると冗長な印象を与えてしまいます。特に、何度も連続で使うことは、回りくどくて聞いているほうも違和感を覚えるので、使う頻度にも注意が必要です。
「本日司会を務めさせていただきます、○○です。これから資料を配布させていただきます。そのあと資料の説明をさせていただきます」など、続けて使うのは避けたほうがいいでしょう。
5:させていただく症候群に注意!
最近では、「させていただく」をなんにでもつける行為を「させていただく症候群」などと呼んでいます。丁寧な表現だからと使いすぎると、慇懃無礼なイメージを与えかねないので気をつけてくださいね。
【参考】
「敬語の指針」 – 文化庁