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裁量労働制の裁量とは?メリットとこの働き方ができる仕事

水野 文也

水野 文也F.Mizuno

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目次

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1:裁量労働制の裁量とは?

(1)裁量労働制の裁量とは?

働き方改革が進展する中で、注目されているのが裁量労働制です。「裁量」の意味を辞書で調べてみると、下記のとおりです。

その人の考えによって判断し、処理すること。

出典:デジタル大辞泉の解説(小学館)

また「裁量労働制」を辞書で調べ見ると、

業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分の決定を労働者の裁量に委ねる必要があり、使用者が具体的な指示をしない労働形態。当人との間で結んだ労働協約に基づき、実働時間にかかわらず一定時間労働したものとみなして賃金が支払われる。特に時間で管理しにくいシステムエンジニア・デザイナー・編集業務・公認会計士・弁護士、新技術の研究開発業務などが対象。

出典:デジタル大辞泉の解説(小学館)

とありました。

たとえば、クリエイティブな仕事の場合、瞬時に片付くこともあれば、何時間もかけてようやく片付くことも。成果は同じで時間を基準に賃金をもらうとしたら、前者は不利ですよね。仕事の内容によっては、完全に社員に任せたほうがスムーズに進むものも多く、導入する企業が増えています。

(2)裁量、裁量労働制を英語でいうと…

英語で「裁量」を意味する単語は「discretion」で、「裁量に任されている」は「at one’s (own) discretion」と表現します。以下に例文を示しました。

Whenever any trouble happens, they can terminate this contract at their discretion.

「何らかのトラブルが発生した場合、彼らは自らの裁量でこの契約を破棄できます」

「裁量労働制」は英語で直訳すると「discretionary labor system」となりますが、時間が自由になるという意味合いからは「Free-Time System」「flexible work hours」も使えます。

英語から考えると、ある意味「フレックスタイム(flexi-time)」は「裁量労働制」に近いものといえるかもしれませんね。

(3)裁量労働制実態調査とは?

厚生労働省は、裁量労働制の制度改革案について検討するため、裁量労働制の適用・運用実態を把握する目的で、一般統計調査として「裁量労働制実態調査」を実施しました。

プレ調査として、全国の常用労働者5人以上の事業場から無作為抽出した裁量労働制適用事業場を除く、約20万事業場に調査票を配布。平成27~29年度に、専門業務型裁量労働制に関する協定を届け出た事業場及び、平成29年度下半期に企画業務型裁量労働制に関する報告を行った事業場に、事前確認票を2019年秋に配布しました。

その後、2019年11月8日掲載で、裁量労働制実態調査(本調査)の情報を発表し、「裁量労働制実態調査に関する専門家検討会」が2020年4月6日に開かれています。

(4)法的な意味での「自由裁量」とは?

「裁量」という言葉は、「裁量労働制」で広がった感がありますが、同じく「裁量」がつく言葉としては「自由裁量」というものがあります。その意味は、下記のとおりです。

法の拘束に対して一定の範囲内で行政庁の自由な判断や行為が許されること。

出典:デジタル大辞泉の解説(小学館)

役所は、法律に忠実に従って政策などを実行しますが、法律の解釈において、一定の判断の余地が認められていることを「行政裁量」といいます。

その中でも、ふたつの考え方があり、ひとつが司法審査が可能な「法規裁量」。もうひとつが、司法審査には一定の範囲内で拘束されない専門技術的判断や政策的判断で行う「自由裁量」です。

「自由裁量」は裁判所の判例から、外国籍の人への在留特別許可、生活保護基準の認定、原子炉の安全性の審査などが、文字どおり裁量で行うことができるとされています。

2:裁量労働制のメリット

(1)時間が有効に使えるようになる

個人の価値観、ワークライフバランスが重要視される時代において、これが最も大きいメリットなのではないでしょうか。労働時間を自分で決定できるため、たとえば、子どもの世話をしてから出勤、早めに切り上げてスポーツクラブに通う……。時間に融通がきき、その分、時間を有効に使うことができます。

もちろん、成果を上げることは要求されますが、自分の仕事を効率的かつ短時間で終えることが許されるこの制度は、とてもありがたいといえるでしょう。

(2)やりたいと思ったことに挑戦できる

勤務時間に融通がきく以外にも、業務遂行の方法に具体的な指示を受けないのも、大きなメリットになります。もちろん、その分、責任は重くなるでしょう。しかし、それだけやりがいも大きくなります。

特に、専門性の高い仕事をしている場合、よりスキルアップさせることも可能になるのではないでしょうか。やりたいと思ったことに挑戦できますし、専門性を高めるための時間確保が容易になることはいうまでもありません。

(3)不公平感がなくなる

あの人の倍の速さで仕事を終わらせることができるので、給料が同じって不公平じゃない? そう思っている人は少なくないと思います。裁量労働制になれば、時間ではなく仕事の内容が給与の基準になります。なので、そうした意味での不公平感はなくなるでしょう。

3:裁量労働制が認められやすい職種とは?

(1)向くのは「時間=成果ではない」仕事

まず、裁量労働制はどんな仕事に向いているかを考えてみましょう。労働時間と成果がイコールではない仕事が増え、それらが従来の働き方や賃金制度では効率が悪いといった理由から誕生したことを考えると、「時間=成果」ではない仕事が該当します。

一般企業でいえば、時間をかければ仕事が完了するという性質ではない、企画部門や研究部門などがそれにあたるでしょう。

(2)企画業務型裁量労働制

裁量労働制はどのような業務でもOKというわけでなく、適用される業務として、主に2種類に分けることができます。そのひとつが、「企画業務型裁量労働制」。企業の中核を担う部門であり、企画立案や調査、分析業務に携わるホワイトカラーが該当します。

ただし、導入要件は厳格で、労使委員会を設置、そこで5分の4以上の多数決で8つの事項を決議する必要があります。

(3)専門業務型裁量労働制

携わる時間を限定できない業務で、現在は下記の19業務が該当します。これらを見ると、なるほどと思える職種ばかりですね。

弁護士、税理士、研究開発、情報システムの分析・設計、取材・編集、デザイナー、コピーライター、プロデューサー・ディレクター、ゲーム開発、システムコンサルタント、インテリアコーディネーター、証券アナリスト、大学教授、金融商品開発、公認会計士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、中小企業診断士

4:残業代はどうなる?裁量労働制のデメリット

ここまで「裁量労働制」を絶賛するように、メリットを挙げてきましたけど、もちろん、デメリットも少なくありません。

導入する際、あらかじめ「何時間働いたことにする」といった、実際の労働時間にかかわらず「みなし時間」を設定しますが、たとえば、みなし時間を8時間に設定しながら、仕事に10時間要した場合、超過した2時間分についての残業代は支払われません。休日出勤については考慮される企業が多いようですが、残業代は期待しないほうがいいでしょう。

仕事を早く切り上げればメリットですが、残業代なしの長時間労働になりやすいというケースも少なくないようです。中には、適さない業務なのに裁量労働制を導入、残量代を浮かして人件費を削減し、厚生労働省から勧告を受けた悪質な大企業もありました。

また、チームで仕事をする場合は、各人のスケジュール調整が大変になるといったデメリットも生じます。また、自分にかかる責任が大きくなりやすいということで、それがプレッシャーになるかもしれません。

5:まとめ

現役の記者時代、夜中の3時ごろまで仕事で拘束された翌日、朝の8時には現場へ、なんてこともありました(苦笑)。

社会人になってから、時間という概念の乏しい仕事以外したことがないので、裁量労働制というのは当然あってしかるべきものだと思います。裁量労働制は「好きな仕事」でこその制度といえるのではないでしょうか。