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父の不倫で家族を失った私が不倫にハマった理由【第20話・後編】ーシンデレラになれなかった私たちー

毒島 サチコS.Busujima

目次

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Case20:不倫にハマった女性

名前:アヤコ(30歳)

東京都出身。広告代理店に勤めるOL。小学生のとき、父の不倫現場を目撃し、その不倫がきっかけで両親が離婚。「自分は絶対に不倫なんてしない」と固く心に決めていたが、5歳年上の既婚者・ユウキに恋をし、不倫関係になる。

バレなければ不倫してもいい。なぜなら、誰も傷つかないから

母を泣かせ、家族をバラバラにした父の不倫。小学校のとき、父の不倫現場を目の当たりにした私は、不倫は絶対にしないと決めて生きてきました。

でも、激しいひと目惚れの末、恋に落ちたのは、既婚者のユウキでした。

バレなければ誰も傷つかないから……。「不倫はしない」という誓いは、そんな身勝手な理屈の前に、もろくも破られました。

ところが、ユウキと付き合い始めて1年と少したったある日の土曜日の夕方、突然、ユウキと連絡が途絶えました。丸1日経っても連絡はなく、心配になった私は打ち合わせの約束があると嘘をついて、ユウキの会社に電話を掛けました。

そこで私は、ユウキが緊急入院したことを知ったのです。

前編はコチラ

緊急入院の先に

普段から、私のわがままを全部聞いてくれて、心配をさせたり、突然連絡がとれなくなったりすることのなかったユウキ。あまりにも心配で、彼の会社に、打ち合わせの約束があると嘘をついて電話をかけました。

「え、昨日から入院されているんですか?」

「はい。急に倒れたみたいで。あ、でも、命に別条ないみたいなのですが……」

「そうですか……」

「しばらく出社しないと思うので、別の担当に繋ぎましょうか?」

「あ、大丈夫です。急ぎではありませんので」

電話を切ったあと、もう一度、自分のスマホに目を落としました。まだ、ユウキからの連絡はありません。

私は心配で、いてもたってもいられなくなりました。入院先を聞こうとも思いましたが、下手に詮索をすると、私たちの関係を怪しまれてしまうかもしれません。私の不倫は「バレないこと」を条件に成り立っているのです。

「命に別状はない」という言葉を信じて、私はじっと耐え、ユウキからの連絡を待つことにしました。

彼の入院先で

「いやー、びっくりしたよ。緊急手術なんて」

ユウキから連絡が来たのは、3日後でした。「すごく心配したよ。すぐ病院行くね」とLINEを打つと、ユウキの入院している病院に向かいました。

「あ、17時以降にしてもらえるかな」

ユウキからそう返信が来ていたのを確認せずに、病院についたのは16時半頃。息を切らしながら病室の前に立ち、ドアノブに手をかけたそのとき、

「パパ、いつ帰ってくるの? 運動会、これるの?」

「エリの運動会は、おじいちゃんがかわりに出てくれるって」

女の子と、大人の女性の声が聞こえました。

一瞬で、ドアノブにかけた手の力が弱まりました。その場を立ち去ろうとしましたが、足が動きません。

「おじいちゃん、元気だから、パパより足速いかもなぁ」

ユウキの声が聞こえました。ドアを一枚挟んだ向こうでユウキがどんな表情をしているのか、想像すればするほど胸が苦しくなり、ドアノブにかけた私の手は、小刻みにふるえていました。

「じゃあ、また明日くるね!」

ガラッと病室のドアがあきました。

目の前に、ショートカットの女性が立っていました。

私は「会社のものです。いつもお世話になっております」と言って、軽く会釈をしました。

女性は「わざわざありがとうございます」と、深く頭を下げました。私は目を合わせることができませんでした。

「こんにちは~」

女性に手をひかれた女の子は、ユウキとそっくりの、丸くて大きな目をしていました。

初めて知った恋人の父親の顔

「奥さん、綺麗な人だね。娘さん、エリちゃんっていうんだね。ユウキにそっくりじゃん」

久しぶりの会話が、ユウキの家族のことになるなんて……。奥さんの口ぶりから、私とユウキの関係は、バレていないことが分かりました。

「退院はいつなの?」

「来週中には。退院した日は、どっか泊まりに行こう」

「すぐに退院できるんだね。よかった。家に帰らなくて大丈夫なの?」

「大丈夫。すぐに出張だって言ってあるから」

そのとき、胸がチクッと痛むのを感じました。私は、不安な気持ちをごまかすように、ユウキにキスをしました。

そのときです。病室のドアがガラッと開いたのです。

「パパ、お手紙渡すの忘れてた!」

そこには、エリちゃんが立っていました。その手には、折り紙で作ったハート形の手紙がありました。

私はとっさにユウキから離れました。

エリちゃんは、不思議そうに私の顔を見つめていましたが、ベッドの反対側にまわってユウキに手紙を渡すと、サッと走り去りました。

その姿は、あの日の私に重なって見えました。

「会いたい」と言えない日々

程なくして、ユウキの退院日が決まりました。退院の日、私は仕事と嘘をついて、会いにいきませんでした。

「もしかして、この前のこと気にしてるの? 大丈夫だよ。バレてないから」

しかし私の中では、何かが大きく変わっていました。あれだけ恋焦がれていたユウキに、会いたくても「会いたい」と言えなくなっていたのです。

不倫の先にあるもの

そしてある日、私はひっそりと、不倫を終わらせました。

誰にも祝福されず、逆に非難もされずに始まった恋は、ただ連絡先を消すだけで終わりました。何度かユウキがマンションに来ましたが、4度目の居留守のあと、連絡はなくなりました。

それから一年後、風の噂で、ユウキにふたりめの子供が生まれたことを知りました。

「不倫は、バレなければ誰も傷つかないよ」

確かに、私はこの不倫で誰も傷つけていません。

この不倫で、たったひとり傷ついたのは、他でもない私自身でした。

考察:不倫で傷つくのは自分

「不倫を始めたころ、ユウキに恋焦がれて、自分の会いたいっていう欲望を優先させていたころは、ホントに楽しかった。でも、彼が病気に倒れて、普通にお見舞いにも行けない身なんだなぁって悟って、奥さんと娘さんの姿を目の当たりにしたとき、何かプツッと切れちゃったんです」

取材を終えて、アヤコさんはこう語りました。

「バレなければ、不倫はしてもいいと思っていました。誰も傷つかないからという理由で。でも、バレない不倫は、自分を傷つけるんです」

人を本当に愛する先にあるものは

「たぶん私は、自分の幸せよりも、相手の幸せを願ってしまったんです」と語るアヤコさん。「でも不倫は、相手の幸せを願ってしまったら、自分は幸せになれないんですよ」といいました。

「ユウキと別れたあと、私は父の不倫相手のことを思い出していました。そのときまで、彼女は誰よりも父を愛していたんだ、だから私たち家族から父を奪っていったんだと思っていました。

でも、彼女は父のことよりも、自分のことを愛していたのだと思います。だから、私たち家族に不倫がバレて、傷つけたことがわかっていても、自分の欲望を優先させられた。そして、父を奪うことができたんだと思います。でも私には、それはできなかった」

テレビのワイドショーからは、連日のように、不倫を非難する声が上がっています。非難の矛先は、既婚者に手を出した独身女性にも向かいます。アヤコさんは不倫を否定しません。でも「不倫をしてもいいのは、バレてもいいという覚悟がある人だけ」とつけ加えました。

「誰も傷つけない不倫なんて、この世に存在しません。不倫がいけないのは、必ず誰かが傷つくから。それに、“バレなければ不倫はしてもいい”っていう考えは、自分がいちばん傷つきます」

「次に人を好きになるときは、自分をいちばん大切にしたいですね」そう言って、彼女は空を見上げました。

【筆者プロフィール】

毒島サチコ


photo by Kengo Yamaguchi

愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「MENJOY」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。

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次回:10月3日土曜日 更新予定