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女の幸せは結婚しかない?憧れの会社をたった6か月で辞めた理由【第19話・前編】―シンデレラになれなかった私たちー

毒島 サチコS.Busujima

©gettyimages

Case19:新卒入社した会社を6か月で辞めた女性

名前:チサト(23歳)

長崎県出身。福岡の大学に通い、ずっと憧れていた東京の映画会社に就職。大学で知り合い、福岡に残っている彼氏との遠距離恋愛に対して不安が……。

憧れの仕事と引き替えに、遠距離恋愛に…

「内定、出たよ!」

私が本命の会社の内定をゲットしたのは、大学4年生の秋。3年ほど付き合っている彼氏・ユウスケは、しばらく間をおいたあと、「おめでとう!」と言ってくれました。

私は長崎県出身、彼は福岡で生まれ育ちました。福岡の大学で出会い、お互い映画が好きなことがきっかけで、2年生から交際スタート。ユウスケは、地元の市役所へ就職が決まっていました。

私には、夢がありました。大好きな映画に関わる仕事をすること。そして、いつか東京で働くこと。福岡の飲食店を経営する会社に内定をもらっていたものの、映画業界を諦めきれず、何度も夜行バスで東京へ。不採用通知ばかりが届き、もうだめかと諦めかけたときに、映画のプロモーション会社からの内定通知書が届いたのです。

「チサトの会社って支社とかないよね?」

「九州支社もあるんだけど、最初は東京本社かな」

「じゃあ来年からは遠距離恋愛かぁ」

ユウスケは寂しそうな顔をしたあと、こう言いました。

「俺は福岡が好きだし、これからもずっと地元を離れるつもりはないからさ」

いつか彼と結婚したいけれど、人生は一度きり

ユウスケと離れ離れになることは、とてもつらいことでした。いつか結婚したいと考えていたからです。でも「人生一度きりだから、自分のしたい仕事に就きたい」という思いも捨てきれない。まだ22歳。人生は長いし、やりたいことをやらなければ後悔するかもしれない。

「本当に、行くって決めたんだよな」

「うん、ずっとやりたかった仕事だもん。遠距離だけど、いつか九州に戻ってくるよ」

それ以来、ユースケは酔っ払うと「行かないでほしい」と本音をもらしました。でも最終的には、私の熱意に押され「待ってるから」と応援してくれました。

そして春になり、福岡と東京の遠距離恋愛がスタートしたのです。

入社1年目の4月…理想と現実のはざまで

入社してすぐ、3か月間の研修を兼ねて、7月に公開されるホラー映画を宣伝するチームに配属となりました。右も左もわからないまま、イベント運営の手伝いや取材の調整などに追われ、平日は朝から終電まで、休日も働きづめの日々。それでも、憧れていた映画の仕事に関われることに喜びを感じていました。そしてユウスケには、必ず毎日、会社からの帰り道に電話をかけました。

「今日さ、女優の〇〇さん見たよ。顔が小さすぎて、同じ人間とは思えなかったよ」

「そうなんだ。この時間まで仕事?」

「うん、ユウスケに早く会いたいよ。7月にならないかな」

夏休みには、ふたりで京都に行く約束をしていたのです。

入社1年目の5月…「痛い」先輩

5月、新入社員歓迎会がありました。会社の近くの居酒屋に集まったのは同じ部署にいる先輩と、同期で配属された女子2名。先輩たちは映画が大好きで、観たことも聞いたこともないタイトルが次々と飛び出し、追いつくだけで、やっとでした。

歓迎会も後半にさしかかったころ、お酒のまわった男性の先輩が突然、私たちを指さしました。

「今年の女子ふたり、めっちゃ可愛いよね?」

「俺もそう思ったわ。ふたりとも絶対モテるでしょ」

先輩たちの目線が、一気に私と隣に座っていた同期に集中し、その場は恋愛についての記者会見状態に。パニックになってアタフタしていると、「ほらっ! ここにも美人いるけどね」と、奥に座っていた、ベテランの女性課長が手をあげました。

「この仕事してたらさあ、役者とかアイドルとか、イケメンにたくさん会うじゃん。だから、普通の男がしょぼく見えるんだよね。目が肥えるから、ふたりも気をつけて!」

課長はそう教えてくれると、手元のワインを一気に飲み干しました。

「お局になりたくないよね」

「あんなふうにはなりたくないなぁ。あの先輩、一生独身だよ、きっと」

帰り道、同期が、私の耳元でささやきました。

「でも課長だし、忙しくて恋愛する機会がなかっただけじゃない?」

「え~、イタくない? あの年でああだったら、もう結婚は無理でしょ。自分に見合う男がいないとか言ってたし。やっぱり、仕事ができて自立しちゃったら、プライドも高くなるんだね。私は今の彼と結婚したら、会社やめるつもりだよ」

「え、そうなの?」

「うん。この仕事続けてたら、婚期逃しそうだし。彼氏とはもう長いしね。やっぱり女の幸せってさ、最終的には結婚だと思う」

「いつ?」

「う~ん、3年後くらいかなぁ。彼とはそう話してる。今しかできないエンタメの仕事ができて良かったって思うけどね」

脳裏に、ユウスケの顔が浮かびました。3年後のことなんて、考えてもいなかった……。

「チサトも、彼氏のところにいつか帰るんでしょ? 福岡だっけ?」

女の幸せは…結婚?

「女の幸せってさ、結婚だと思う」という同期の言葉がずっと、頭の中で繰り返し再生されていました。私はこの先、この仕事をずっと続けていくのだろうか。ずっと憧れていた仕事だし、やりがいもある。でも、今は残業に耐えられたとしても、結婚した後は?

考えてみれば、先輩女性社員ふたりは、どちらも30代後半で独身。研修終了タイミングの面接で、私は人事担当の人に「いつか九州支社への希望は出せますか?」と質問しました。

「う~ん、そのときになってみないとわからないなぁ。支社はどこも人員を絞っているし。希望は出せるけど、タイミング次第っていう感じかな」

襲ってくる寂しさ

夏になると、入社時の希望に満ちた気持ちは薄れ、「ずっとこの会社にいることはないかもしれない……」と考え始めていました。

東京に来て3か月。狭いマンションと会社の行き来してしておらず、毎日発生するさまざまな調整ごとに忙殺される日々。いつの間にか新鮮さは失われ、孤独感が毎晩襲ってきます。

「九州支社にいけないとしたら、ユウスケと私はどうなるのかな……」

福岡で仕事を見つけ、ユウスケと一緒に住むほうが幸せなのかも……。次第に、福岡の求人サイトを眺めるのが日課になりました。

そしてある夜、私は軽い気持ちで、「仕事辞めて福岡に戻ろっかな」とユウスケに言いました。

でも彼からは返ってきたのはこんな言葉でした。

「え、仕事辞めるん? 福岡で何するん?」

後編へ続く――

【筆者プロフィール】

毒島サチコ


photo by Kengo Yamaguchi

愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「MENJOY」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。

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次回:9月12日土曜日 更新予定

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