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処女をクズ男に捧げた私の「幸せな恋愛」の見つけ方【第18話・後編】-シンデレラになれなかった私たちー

毒島 サチコ

毒島 サチコS.Busujima

Case18:処女を捧げた彼がクズ男だと知った女性

名前:モトコ(30歳)

富山県在住。私立高校の社会科教員。27歳のとき、飲み会で出会った年上の彼氏ができる。28歳で初体験を終えるも、彼の浮気現場を目撃してしまい……。

前編はコチラ

スーパーで彼の浮気現場を目撃…

仕事をしているはずの彼が、こんな夕方に、女性と一緒にスーパーにいる。信じられない光景を理解するために、卵の陳列棚の陰から、彼に電話をかけました。

1回、2回、3……。コールを聞きながら、私はどこかで希望を捨てきれずにいました。あの女の人は、彼の仕事仲間かもしれない。なんらかの理由で、彼が一緒に買い物に付き合っているだけかも。あ、もしかしたら妹さんだったりして。

(出て……

私は、震える手を耳に押し当てて、彼が気付くのを待ちました。5回目のコールにさしかかったとき、彼がポケットに手を入れるのが見えました。一緒にいる女性は、野菜コーナーの玉ねぎを覗き込んでいます。その横で、彼はスマホにチラッと目をやりました。

(あ、気付いた……!)

その瞬間、電話が切れました。目の前にいる彼は、スマホをポケットに戻すと、ワンピースを着た華奢な女性とまた手をつなぎ、レジに向かいました。私は買い物かごを持ったまま、呆然と立ち尽くしていました。

彼からの連絡を待つ日々

私はスーパーを逃げるよう出ると、ベッドになだれこみました。

次の日の朝になっても、彼から返信はありませんでした。返信どころか、「今、そっくりな人見つけた(笑)」というLINEにすら、既読がつきません。

彼に連絡しようとLINEを打っては消し打っては消しを繰り返し、我慢できなくなった夜、一通だけLINEを送りました。

「浮気したくなることもあるよね。一回なら許す!(笑)」

少しでも彼が返信しやすいようにと、絵文字とスタンプ付きでカジュアルに。私は、彼が謝ってくれると信じていました。たとえ言い訳だとしても、「ごめんね」といってほしかったのです。

その日は仕事を休みました。目が腫れて、人前に出られるような顔ではなかったのです。

 女友達との再会

彼からの連絡が途絶えて、1か月が経ちました。このころ、私生活に変化がありました。夏美の誘いで、ヨガ教室に通うようになったのです。彼と付き合っているとき、夏美の「上から目線」のアドバイスに苛立ち、少し距離を置いていましたが、彼と会えなくなった今、夏美の誘いはとてもうれしく感じました。

「最近、彼とどう?」

「んー、普通かな」

「もうアラサー処女卒業とか騒いでた時期から、1年経ったんだねぇ」

「もうそんなに経つのか~」

恋愛の話題になると、私はいつも話をごまかしました。夏美には恥ずかしくて彼と連絡が取れなくなったことは話していません。ただ、元気がないことは見透かされているようでした。1か月、2か月……。彼と連絡を取らないまま、どんどん時間が過ぎていきました。 

彼からの急な連絡

彼からの連絡が途絶えて、2か月と少し経った金曜日の夜。仕事を終え、車を運転していると、突然、電話が鳴りました。それは、待ち焦がれていた彼からの電話でした。一呼吸おいて、彼の電話を取りました。

「モトコ、久しぶり~!」

「久しぶりだね。どうしたの」

「なんかごめんね。っていうか、インスタ見たけど、最近痩せたんじゃない?」

彼は、2か月以上会えなかったとは思えないくらい、普段どおりの口調で話します。

「うん……ヨガ始めたんだ」

「そっか! びっくりした! めっちゃ痩せてキレイになってるからさ~。会いたいなぁ」

「会いたい」その言葉に一瞬、胸が高鳴りました。

「で、どうしたの?」

「時間空いたし、ごはん誘おうって思って電話した」

彼の声を聞くのは、あのスーパーのとき以来です。

彼を待っていた時間

「時間空いたし、ごはん誘おうって思って電話した」

彼が発したその言葉が、何度も私の脳内で再生されていました。私は電話を切ったあと、しばらく路肩に車を止め、彼を待ち続けた1年間のことを思い出していました。

2週間に一度、彼から会おうと連絡がありました。でも、それは決まって夜20時を過ぎたころ。突然「今日、暇?」と聞かれるのです。

「いつも急だね。暇だよ~」

私は平然を装って返信しましたが、本当は飛び上がるくらい嬉しい。いつ呼ばれてもいいように、仕事が終わった後も、化粧を落とさず待っていました。お風呂に入った後でも、彼に呼び出されると「今仕事終わったところ」と嘘をついて、急いでおしゃれをして、彼に会いました。

でも、一度だって彼と外で手をつないだことはありません。一緒にスーパーに行ったこともなければ、彼の家の場所も知らなかったのです。

このとき、あることに気付きました。気が付くと私は、家と逆方向に車を走らせていました。

 はじめて泣いた日

私が向かったのは、終了間際のヨガ教室でした。

「なんで、相談してくれなかったの!」

私が涙でぐちゃぐちゃになった顔を見て、夏美はカンカンに怒っています。

「なんだそのクズ男! キモすぎ」

「まさかの私が浮気相手っていうオチ。だから言ったの。え? 痩せたから、抱きたくなったの?って。今からデートだから無理って。で、電話切って、号泣(笑)」

「最高。……こういう話、ずっとモトコとしたかった」

最初は怒っていた夏美ですが、私の表情を見て「めっちゃ泣くじゃ~ん」と、ケラケラ笑い始めました。

このとき私は、はじめて夏美の前で泣きました。その涙は、彼を待ち続けたときに流した涙とは、まったくの別物でした。失恋したことを悲しんで泣いたわけではありません。

嬉しかったのです。夏美と、こんな話ができるなんて。こんなに恋愛で泣くなんて。それは、初めての経験でした。

「ねえ、モトコ、この後飲みに行かない?」

私は今、人生で初めて、友達と恋バナをしています。

考察:幸せな恋愛って?

「今ならわかります。高校生のとき、失恋をして、学校を休んだ夏美の気持ちが」

モトコさんは取材の後、そう語りました。

「ずっと馬鹿にしてたんです。たかが失恋で、なんで泣くんだって。クズ男なのに、なんでハマるんだって。でも自分が本気で恋愛してみて思った。恋愛は楽しいけど、それ以上につらいもんだって。自分じゃどうしようもないし、ダメな恋って自分じゃ気付けない」

恋愛が人生そのものになってはいけない

誰もが、幸せな恋愛のかたちを探していますが、その過程でモトコさんのように、つらい思いをした女性もたくさんいます。

「つらい恋愛の特徴は、恋愛が人生そのものになること。私がそうだった。仕事より家族より彼。もちろん恋愛するとそうなる時期はある。でも自分より、彼だった。それは本当によくない。でもそれって、一回経験してみないと分からないんですよね。

そういえば、私、15キロも痩せたんですよ! ヨガの効果もあるけど、彼のストレスもあって。だけど、その痩せた私を見て、連絡してきたわけだから、ホントにクズ。あぁ、本当に最悪の恋だった! あんなやつに処女捧げたとか黒歴史! ありえない! サイテー!」

モトコさんは取材の最後をこう締めくくりました。

「でも、なんだかんだ彼には感謝してるかな。次は幸せな恋愛ができそう。幸せな恋を見つけるためには、不幸な恋を知らないといけないと思うから。それと、もうひとつ大切なことに気づきました。不幸な恋から立ち直るためには、女友達が必要ってこと!」

【筆者プロフィール】

毒島サチコ


photo by Kengo Yamaguchi

愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「MENJOY」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。

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