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「賜る」の意味や類語は?ビジネスで使える例文と正しい使い方

松田優

松田優Y.Matsuda

目次

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1:「賜る」の読み方は「たまわる」。その意味は?

「賜る」は「たまわる」と読みます。日常的にはあまり使いませんが、ビジネスシーンや社交の場などでは頻出する言葉です。「賜る」の意味や例文などをチェックし、意味を理解しておいて、いざというときに使ってみましょう!

(1)賜るの意味

まずは「賜る」の意味を見てみましょう。

賜る(読み)タマワル

1 「もらう」の意の謙譲語。目上の人から物などをいただく。ちょうだいする。「日ごろお客様からご愛顧を―・っております」「禄ども、しなじなに―・り給ふ」〈源・桐壺〉

2 「与える」の意の尊敬語。鎌倉時代以降の用法。目上の人が物などをくださる。「臣下に金一封を―・る」

3 神の許可を得て、通行を許してもらう。
「足柄(あしがら)のみ坂―・り顧みず我(あれ)は越(く)え行く」〈万・四三七二〉

4 (補助動詞)動詞の連用形、また、それに「て」を添えた形に付いて用いる。

㋐「…てもらう」の意の謙譲語。…ていただく。「まげて許し―・らん」〈徒然・八七〉

㋑「…てくれる」の意の尊敬語。鎌倉時代以降の用法。…てくださる。「われをも舟に乗せて―・り候へ」〈謡・隅田川〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「いただく」よりも丁寧な、「~してもらう」の謙譲語であり、「~してくれる」の尊敬語とのこと。「3」の「神の許可を得て、通行を許してもらう」とあるように、目上の人から何かを受け取るときに使う言葉です。

(2)「賜る」と「賜わる」の違いは?

「たまわる」で変換すると、「賜る」も「賜わる」も表示されますね。これは使い分け方があるのではなく、どちらも使用できるということです。

例えば、文化庁が制定している内閣告示・内閣訓令の「送り仮名の付け方」においては「たまわる」の送り仮名は、本則では“「賜る」とする”と定められています。しかし、その中で“「賜わる」も送り仮名として許容する”とされているため、「賜る」と「賜わる」、どちらも差異なく使用できて、どちらかが誤りということもありません。

ただし、常用漢字表や辞書等でも主に掲載されているのは「賜る」なので、原則「賜る」を使うのがベターといえそうです。

2:「賜る」の正しい使い方

物をもらう、恩恵を受けるという意味の謙譲語としては、「ご愛顧を賜り~」「ご指導ご鞭撻を賜りますよう~」など、ビジネスメールや書状の他に、かしこまったスピーチ文などでも一般的に使われます。

目上から目下に何かを与えるという意味の尊敬語としては、「○○様よりご支援を賜りました」「みなさまから賜りましたご寄付のおかげで~」など、何かを与えてくれた相手を立てるように使います。

ただし、堅い言葉なので親しい人へやカジュアルな雰囲気のスピーチなどではあまり使用しない表現です。相手によっては嫌味に受け取られたり、失礼にあたる場合もあったりするので注意が必要です。

3:ビジネスでも活躍!「賜る」を使った例文5つ

改まったビジネス文章で役立つ表現なのがわかったところで、実際に「賜る」を使えるシーンとその例文を、5つ見てみましょう。

(1)ご挨拶を賜りたいと存じます

記念式典や大規模な会議、公式な場での挨拶を、上司や役員、取引先などへ事前に依頼するときに使う表現です。「ご挨拶を賜りたく存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」「挨拶を賜りたく存じますので、よろしくお願いいたします」となります。

なお、式典などの当日は、「(社名・役職)の○○(様)より、ご挨拶を申し上げます」というように呼び込む形になります。

(2)平素より格別のお引き立てを賜り誠にありがとうございます

取引先や顧客へのメールや、書状の書き出しなどによく使われる表現です。「日ごろよりご愛顧いただき誠にありがとうございます」や「いつもお世話になっております」などを、かしこまった書き方にしたものです。

馴染みのある相手への挨拶に使用するには、かなり堅めの表現ですが、ご案内やお知らせなど、広く通知する書面などで一般的に使われていますね。

(3)○○につきまして、皆さまよりご支援を賜りました

何かことを成すために支援をいただいたことをお知らせする際などに、「本プロジェクトの推進におきましては、みなさまよりさまざまなご支援を賜り、誠にありがとうございました」「当施設の建設につきまして、皆さまより多大なるご支援を賜りましたこと、深く感謝申し上げます」というように使用します。

「みなさまのおかげです、ありがとうございます」と、相手を立てて感謝を伝える場面で使える表現です。

(4)何とぞご協力を賜りたく、折り入ってお願い申し上げます

「賜りたく」は、何かをお願いするときに使える表現です。「ご協力」だけでなく、「ご指導」「ご意見」「ご高配」などと組み合わせて使われることも多いですね。また、目上の方に丁寧にお願いをするシーンでの使用が主なので、「お願い申し上げます」や「存じます」を組み合わせるとより良いでしょう。

「今後ともますますのご高配を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます」というようにも使うことができます。

(5)ご光臨を賜りまして、誠にありがとうございます

何かをしてもらったとき、何かをしてくれたときのお礼の言葉として「賜りまして」という表現を使います。そのため、「ありがとうございます」や「感謝申し上げます」などと組み合わせて使います。

「ご光臨を賜りまして~」は「お越しいただきありがとうございます」をさらにていねいな言い方にしたものです。他にも、贈答品などをいただいたときは「先日は誠にけっこうなお品をご恵贈賜りまして~」のように使用します。

4:「賜る」の類語や言い換え表現3つ

丁寧な表現の「賜る」は、他にどんな言葉に言い換えられるでしょうか。謙譲語と尊敬語の表現を、3つご紹介します。

(1)いただく

謙譲語としての「賜る」は、「もらう」「受け取る」という意味なので、「いただく」と言い換えることができます。「たいそうなお品をいただき、心より感謝いたします」のように使います。

「取引先より記念品をいただいた」「部長よりお褒めの言葉をいただいた」「報奨をいただいた」などとすることで、相手への感謝の気持ちを表すことができます。

(2)拝受する

「拝受」も目上の人から何かを「もらう」「受け取る」という意味がありますので、こちらも謙譲語の「賜る」に言い換えることができます。「社長賞を拝受いたしました」というように使い、「拝み受け取る」気持ちを表します。

また、目上の人からのメールや資料等を受け取りましたという意味でも使われます。「○○の資料、確かに拝受いたしました」のように使うと、スマートな印象になりますね。

(3)くださる

「賜る」を尊敬語とするときの意味は、「くれる」「あたえる」でしたね。ですので、「くれる」「あたえる」を丁寧に表現すると「くださる」と言い換えることができます。

「取引先がくださった記念品」とすることで、「取引先は目上の存在であり、記念品を受け取るのは名誉なことである」と相手に伝えることができる表現になります。

5:まとめ

丁寧なイメージでありながら、使い方がどこかややこしかった「賜る」。意味や使い方、英語での表現を知ることで、グッと使いやすくなったことでしょう。例文や言い換えの表現を参考に、目上の人に一目置かれるような、スマートなビジネス文章を作成してみてください。

【参考】

内閣告示・内閣訓令 「 送り仮名の付け方 」