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アラサー処女が初体験を迎えた日【第15話・後編】―シンデレラになれなかった私たちー

毒島 サチコS.Busujima

Case15:30年の処女をついに卒業する女性

名前:モモコ(30歳)

高知県在住の銀行員。「初体験は大好きな人としたい」と心に決めているが、そういった機会がないまま30歳を迎えた。それはおかしいことでも、悪いことでもないと思っているけれど、心のどこかでは自分が処女であることをコンプレックスに感じている。

前編はコチラ

30歳、処女

セックスを経験しないまま、気付けば30歳。

「セックスは、してみないと相性が良いかわからない」

親友の言葉が、何度も頭の中でリフレインします。

「よかったら週末、どこかに泊まらない?」

そんな私にも、マッチングアプリで出会った彼から、はじめてのお泊りのお誘いが。とうとう私も、初体験を迎えることになるんだ……。

丘の上のラブホテル

数日前、夜の電話の最後に、彼がこう切り出しました。

「土曜日、映画見たあと、近くのホテルにいこうか。それとも、他に行きたいところある?」

映画館は、高知市内から少し北にあるショッピングモール内のシネマコンプレックスで、そこから車で5分ほどの高台に、ラブホテルがあるのです。

以前の私なら「初体験の場所がラブホテルなんてありえない。この人は私のことを大切にしてくれていない!」と思ったかもしれません。

でも「そんなにセックスを重くとらえなくていいと思う」という親友の言葉に背中を押されて、「うん、適当に入ろっか」と、胸の高鳴りがバレないように、心を落ち着かせて答えました。

映画を観たあと、近くのイタリアンで夕食を食べながら、私は彼に自分が処女ということを告げるべきかどうかを悩んでいました。でも、少女漫画でよく見るような「私、はじめてなの……」と顔を赤らめる主人公のようにはいきません。結局、言い出す機会を失ってしまいました。

初めてのラブホテルへ

「そろそろ行こうか」

デザートのあとのコーヒーを飲み終えたころ、時計は22時を過ぎていました。私たちは店を出て、タクシーで高台にあるラブホテルへと向かいました。

想像に反してホテルは新しく、南国リゾート風のたたずまいでした。ライトアップされた人工のヤシの木の間をぬけて、フロントへと向かいました。

途中、手をつなぎそうな瞬間があったけれど、なんだか気まずいような、後ろめたいような気持ちになり、少し離れて私が後からついていく……というお忍びカップルのような雰囲気になってしまいました。

「ご宿泊ですね。301号室にどうぞ。そちらからお好きなものをお取りください」

店員が指さした先を見ると「おひとりさま3つまで」と書いてあるアメニティがたくさん並んでいました。化粧水やパック、入浴剤、デザートまでありました。

「これ好きな化粧水! どれ選んでもいいの?」

思わず興奮した私を見て、彼は優しく微笑みました。

「そうみたいだね。モモコが6つ選んでいいよ」

(今の発言で、ラブホテル来たのが初めてだってばれたかな……)

顔を赤らめてアメニティを選んだあと、彼の後ろについて、エレベーターに乗りました。

そして迎えた初体験の日

302号室は、バリ島をイメージした内装で、民族音楽のようなBGMが響いていました。部屋の中央に天蓋つきのベッドがあって、大きな液晶テレビにメニュー画面が点滅しています。

ベッドに座るわけにもいかず、窓側にあるソファーの端と端に座り、イタリア料理屋から持ち帰ったワインを飲みながら、他愛もない話を30分ほどしました。

(近づいたほうがいいのかな……? それとも、手をつなぐ?)

ドラマで見るみたいに、彼の肩に頭をあずけようとしても、彼との距離はふたりぶんくらい離れています。

気まずい時間が流れたあと、彼が沈黙に耐えかねたように立ち上がり、

「シャワー浴びてこようかな。モモコ、先に浴びる?」

と言いました。

「あ、お先にどうぞ!」

心臓がドクドクと高鳴るのが自分でもわかりました。

「じゃあ、先に浴びてくる」

彼がシャワーを浴びる音を聞きながら、私はポーチから、新しい下着を取り出しました。さっき選んだアメニティとボディソルトも用意して、彼が出てくるのを待ちました。

「お待たせ」

10分後、バスローブ姿の彼が浴室から出てきました。少し汗ばんだ彼の顔と、バスローブの間から見える胸の筋肉が見えて、心臓が飛び出しそうになりました。

「ありがとう。ちゃちゃっと浴びてくるね」

余裕のある感じを出そうと、シャワールームへ。

無我夢中で、体をすみずみまで洗いました。こんなことになるなら、もっと脱毛しておけばよかった……。いくら剃っても黒ずんだままの脇を見て後悔しました。今日は、肌荒れはそれほどひどくはないけれど、はじめて男性にコンプレックスの肌を見られると思うだけで、心が重くなります。

そして下半身も念入りに洗い、シャワーを浴びて脱衣所でバスロープに着替えようとしたとき、ひとつの疑問が浮かびました。

バスローブの下って、下着を着るのかな? それとも裸?

スマホで調べようとしましたが、バッグに入れたまま……。

(裸はやる気満々みたいで変だよね)

少し考えて、結局下着をつけることにしました。

アラサー処女じゃなくなった日

「お待たせ」

少し汗が引いたあと、私はバスローブ姿で、彼の待つ部屋へ向かいました。

部屋の電気は暗くなっていて、ベッドサイドランプだけが、ほのかに青い光をはなっています。

彼はベッドに腰かけ、少し緊張した表情で、私に手を差し出しました。

それからあとのことは、今も夢の中の出来事だったようにも、一瞬のことだったようにも、数時間のことだったようにも感じます。

彼はベッドに私を寝かせると、バスローブを脱がせ、首筋から胸もと、お腹にかけてキスしました。

頭の中が沸騰するのではないかと思うほど熱くなり、彼の唇が肌に触れる度に、全身に電気のようなものが走りました。部屋にひびく声が、まるで自分の声じゃないように聞こえ、次第に彼の息が荒くなってゆくのを感じました。

いつの間にか背中に彼の手が周り、ブラジャーが外され、反射的に胸を押さえたものの、彼の舌が私の指の間から乳首を見つけ出し、ゆっくりと舌で転がし、吸い上げました。

全身に電気が走り、足の先まで駆け抜けるようでした。

再び私にキスしたあと、彼はお腹に手をはわせ、下着の中に指を差し入れました。

声を出すこともできず、私はうなずきました。彼の指が激しく動く度に、私は体をよじり、のけぞらせ、体をまかせました。

ネットで読みかじった女性側の行為は、何ひとつできないまま、彼はベッドサイドボードに置かれたコンドームを手に取りました。恥ずかしくて、私はずっと目を閉じていました。

「いい? 挿れるよ?」

彼が耳元でささやく声に、私はうなずきました。

下半身に圧力を感じ、彼が中に入ってゆくのを感じましたが、想像していたよりも痛みはなく、閉じられていた扉が少しずつ開かれてゆくような、不思議な感覚でした。

息を止め、声も出せず、気持ちいいのかそうでないのかもわからず、私の頭の中は混乱状態にありました。

本当に、これで良かったのかな?

「モモコ……」

そんな疑問が頭に浮かんだとき、彼が私の名前をささやく声が聞こえ、目を開きました。

目の前で彼の顔が焦点を結びました。

うるんだ彼の目を見て、私は思わず彼の背中に手を回し、抱きしめました。彼が私を抱きしめ返してくれたその瞬間、幸福感で包みこまれるのを感じました。

考察:セックスを語るのは「恥ずかしいこと」じゃなかった

セックス前に悩んでいたこと

「初体験が終わった後、私は彼になんでも話せるような気がしたんです」

モモコさんは取材のあと、こう語りました。

「今までセックスって、絶対大好きな人とじゃないとしちゃだめだとか、恥ずかしいこととかやらしいことだとか、逆に子どもをつくためにするものだとか……。自分の中で固定概念がありすぎて。

それに、ネットの記事を読みすぎて、テクニックとか、挿入する瞬間の感覚とか、そんなことばっかり気にしていたんです。でも、彼に名前を呼ばれて、目の前に彼の顔が見えたとき、すごく幸せだった。あ、これが好きな人とすることなんだって、わかったんです」

初体験を終えて、ますます彼との信頼関係は深まっているそうです。

「“モモコって、もしかしてはじめてだった?”って後日聞かれました(笑)。私は“うん、そうだよ”って普通に答えたら、彼は“やっぱりか”と言って、それ以上は何も言いませんでした。引かれたらどうしようって悩んでいたことって、実はそんなに大したことじゃなかった」

セックスは特別なことじゃない

その後、彼とモモコさんはこんな話をするようになりました。

「私が初めてだと知った彼は、“どこが気持ちいい?”とか、“次はこうしない?”とか、セックスについて話すようになりました。最初は恥ずかしかったけれど、そうすることで最近どんどんセックスが気持ちよくなっている気がします」

彼とのセックスしか経験はないけれど、彼と体の相性はいいと思うと語るモモコさん。

「体の相性っていうと、何だかそれが個別のもののように感じるけど、一緒にいて嬉しい人と、特別なことだと考えすぎずにする。それが結果として、心と体、両方の相性につながっていく。セックスって、会話したり、ごはんを食べたりするの同じように、生活の一部に存在するものなんだなって、思えるようになりました」

自分がアラサー処女だったことをコンプレックスに思っていた時期を振り返って、彼女はこう語りました。

「やっぱりみんながしていることを、自分が経験していないっていうコンプレックスは、どうしても持ってしまうものだと思います。でも一回してみようかな、くらいの気持ちでもよかったんだって。決してセックスを軽くとらえるわけではなく、そうじゃないと分からないこともあるから」

統計によると、25~35歳の未婚日本女性の3人にひとりは処女。

「セックスは恥ずかしいこと。大好きな人とすべきもの」

情報過多の時代、多くの女性がそんな思いを抱えながら日々を過ごしています。でも、ひとりの元アラサー処女がたどり着いたのはこんな答えでした。

「やっぱりセックスは、してみないとわからない」

【筆者プロフィール】

毒島サチコ


photo by Kengo Yamaguchi

愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「MENJOY」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。

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