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アラサー処女が初体験を迎えた日【第15話・前編】―シンデレラになれなかった私たちー

毒島 サチコS.Busujima

Case15:30年の処女をついに卒業する女性

名前:モモコ(30歳)

高知県在住の銀行員。「初体験は大好きな人としたい」と心に決めているが、そういった機会がないまま30歳を迎えた。それがおかしいことでも、悪いことでもないと思っていないけど、心のどこかでは自分が処女であることをコンプレックスに感じている。

未遂に終わった日

「いい? 挿れるよ?」

興奮した彼が耳元でささやく声に、私はだまってうなずきました。胸をまさぐり、キスを重ねた後、彼は下着を脱がせて、指を入れてきました。

「うっ」

全身が硬直し、身動きができないまま、頭の中で思っていたことはたったひとつ。

「初めてだってバレたらどうしよう……」

「30歳で処女」はおかしいこと?

「ええ〜! モモコってまだなの?」

最近、長い海外生活から帰国し、地元の高校で、英語教師として働く同級生のリホがさけびました。

「ちょっと、大きな声で言わないでよ!」

土曜日の昼、久しぶりに再会した高校の同級生たちとの会話は、恋人とのセックスや旦那さんとのレス問題、そして年齢的に現実的になってきた出産と妊娠に関する話でもちきりでした。

「結婚して上の子も3歳だし、そろそろふたりめがほしいな」

「そういえばユイちゃん、デキ婚で結婚したらしいよ」

その話は、彼氏もいなければ、初体験もまだの私にとって、まったく無縁の話に聞こえました。リホが声をひそめ、顔を近づけて上目づかいに私を見ます。

「でも、好きって人はいたし、付き合ったりもしてたでしょ? まさか、一回もないとはねぇ」

「うん……」

久々に同級生と集まると、いつもこう言われます。別に私は30歳で未経験なことを、そんなに変なことだと思っていません。少なくても、建前としては。だって、ちゃんとした理由があるから。

私がアラサ―処女の理由

私がこの年齢まで処女なのには、ふたつの理由がありました。

ひとつは「初体験は大好きな人としたい」と決めていたから。

同級生たちが「エッチをした」と言い始めたのは、高校生になったころ。家が厳しかったわけではありませんが、私はその話を、どこかはしたないことだと思って聞いていました。

「どんな感じだった?」「私も処女卒業した!」

そう言って、軽はずみに彼氏とセックスをしたことを報告してくる友人たち。中には好奇心だけで初体験を済ませてしまう友人もいました。

初体験は、一生に一度しかないのに、そんな簡単に考えるなんて……。

もうひとつの理由は、身体的なコンプレックス。

子どものころから肌が弱く、敏感だった私は、受験勉強などのストレスから肌荒れがひどくなり、男性にそれを見られるのが怖かったのです。

高校を卒業後、地元の女子大に進学して、初めて彼氏ができました。他大学の人でしたが、セックスには至らず、理由は覚えていないくらいあっさりと3か月で破局。その後、銀行に就職しました。

25歳になったとき、当時職場で出会った3つ上の男性に告白されて、なんとなく付き合うことに。

でも、どこかで「この人は私の運命の人ではない」という想いと、男性の前で肌を見せることに対する抵抗があったのです。

合コンに参加すると、お酒の入った男性たちはきまって「下ネタ」で盛り上がりました。

「初体験っていつ?」「初めてのとき、痛かった?」

そうした男性の軽はずみな発言を聞く度に、私は好きでもない人とセックスすることに嫌悪感を覚える一方で、自分が処女であることが、心のどこかで恥ずかしいことに思ってしまうというジレンマを抱えながら、今日まで生きてきたのです。

留学した友人のひと言

「モモコ、こないだまで彼氏……いたよね?」

「うん。いたよ」

「そのときしなかったの?」

「途中までは。でも、最後までいかずに、なんか気まずい雰囲気になって、結局別れた」

リホは「そっか」と呟いた後、小声でこう言いました。

「彼氏じゃない人としたこととかもないの?」

「あるわけないじゃん! ヤリたいだけの男とするくらなら、一生処女でいいや。この歳だからこそ、続かない関係はいらない」

私がそういうと、リホは「う~ん」と少し考えて、こう言いました。

「なんかさ、日本って、男性は処女信仰がある人多くてキモいし、女性は本当に好きな人とじゃなきゃセックスしないって考える人が多いけど、それって、海外では違うんだよね」

セックスが先か、付き合うのが先か

海外での生活が長かったリホの彼は、日本で暮らすアメリカ人。彼との出会いはマッチングアプリだったということにも驚きましたが、その後の話はもっと衝撃的でした。

「彼の周りでは、付き合う前に体の相性を確かめるのは当たり前なんだよ。むしろ、付き合う前にセックスしちゃいけない、っていうのは日本だけだと思う。もちろん、中東とかは結婚する前に手を触れることすらしちゃダメだし、あくまでも私の知ってる範囲だけどね」

リホの彼いわく、彼の国では、日本のように告白して「付き合う、付き合わない」という判断はせず、「デーティング期間(友達以上恋人未満の期間)」に「Friend with benefit」と呼ばれる関係になり、何度かセックスを重ねるというのです。そして、「恋人である」と、友達に紹介された瞬間に恋人同士になるのだといいます。

「もちろん、性格が合うとか、会話が弾むとか、好きなものが一緒っていうのは前提だよ? でもなんで、日本ではセックスだけが特別で、付き合ってからじゃないとダメって理由がわからない。だからモモコも、そんなにセックスを重くとらえなくていいと思う」

今まで当たり前だと思っていた価値観が揺らいでいくのを感じました。確かに、セックスは付き合って、お互いに運命の人だと感じてからするものだと信じて疑いませんでした。でも、そもそもセックスって、してみないと相性がいいかどうかはわからない……。

リホは「まずはアプリでもやってみれば?」と言って、呆然としている私のスマホをとり、リホが彼と出会ったというマッチングアプリをインストールしてくれました。

迎えた初体験の日

それから4か月後、そのマッチングアプリを通じて、彼氏ができました。運命の人かと言われるとそうではないけれど、一緒にいると落ち着くし、穏やかで物静かな人でした。

建築会社につとめる5つ年上の男性。何度かの食事を経て告白されて、付き合うことになったのです。さすがに、付き合う前にセックスをすることはできませんでしたが……。

お互い実家暮らしだった私たちは、週末のデートを昼から夕方まで過ごした後、家に戻りました。帰り際に軽くキスをして別れるのが1か月ほど続いたころ、彼から、こんなLINEが届きました。

「よかったら週末、どこかに泊まらない?」

「セックスは、してみないと相性が良いかわからない……」というリホの言葉が、頭の中に響きました。

「いいよ」

そう返信したものの、大きな不安が膨らんでいきました。

「処女だと知って、彼に引かれないだろうか……」

「本当に、この彼と初めてのセックスをしてしまっていいんだろうか……」

大きな不安を抱えたまま、私は、その日を迎えました。

後編へ続く――

【筆者プロフィール】

毒島サチコ


photo by Kengo Yamaguchi

愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「MENJOY」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。

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