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漸くって読める?意味や漢字の成り立ち、暫くと間違えない覚え方も

水野 文也

水野 文也F.Mizuno

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目次

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1:漸くって読めますか?

そんなに難しい漢字ではないのに、「あれっ、読めないかも」という漢字って多いですよね。「漸く」もそのひとつではないでしょうか。

その実態を調査するべく『MENJOY』では、20代~40代の男女500人に独自のアンケート調査を実施。「“漸く”という言葉を読めますか?」と質問してみました。

結果は以下のとおりです。

読める・・・312人(62%)

読めない・・・188人(38%)

調査では読める人のほうが多かったですが、答えは何だと思いますか。「しばらく」だと思った人もいるでしょうが、答えは「ようやく」です。

2:漸くの意味と類語・漢字の成り立ち

(1)漸くの意味

「漸く」の言葉の意味ですが、「時間はかかったけど、漸く実現した」「難しいと思っていたことが、漸くできた」という文章の「漸く」部分を、前者は「やっと」、後者は「かろうじて」に置き換えてみてください。そのまま意味が通じるでしょう。

このように「やっと」「かろうじて」という意味があるほか、「ゆっくり変化する」という意味もあります。

辞書で意味を調べると、以下のようになります。

ようやく【▽漸く】

1 長い間待ち望んでいた事態が遂に実現するさま。やっとのことで。

2 苦労した結果、目標が達成できるさま。かろうじて。何とか

3 物事がしだいに進行して、ある状態になるさま。だんだん。

4 ゆっくりと。おもむろに。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

(2)漸くの類語は?

例文で挙げた「やっと」「かろうじて」の他にも、さまざまな類語が存在します。「何とか 」「苦労の末 」「どうにか」「ついに」「とうとう」「ようやっと 」「やっとのことで」など、よく聞く言葉も多いですよね。

(3)漢字の成り立ちは?

「漸」は、音読みで「ぜん」と読みます。意味としては「しだいに・だんだんに」という意味があるので、時間の経過を示す漢字といえるでしょう。

字の形は、部首が「さんずい」、つくりの部分が「斬る」ですが、これが「水の流れを斬って徐々に導く」という意味になり、そこから次第に、「ようやく」という意味になったと考えられます。

3:暫くと間違えやすい!違いの覚え方

(1)よく間違える「漸く」と「暫く」

「漸く」と間違えやすいのは「暫く」です。両方とも「斬る」という字が入っているので、読み方を混同してしまうようです。

「暫く」の読み方は「しばらく」で、「少しの間」という意味です。例えば、「暫く留守にします」などと使いますが、「暫く」の意味する期間は、文脈や使用シーンによって異なるなど、明確な定義をもたない曖昧な表現といえるかもしれません。

(2)「漸次」と「暫時」

「漸」と「暫」を使った言葉に、「漸次」(ぜんじ)と「暫時」(ざんじ)があります。前者は「徐々に」「だんだんと」、後者は「しばらくの間」と意味が大きく異なり、本当に紛らわしいですよね。「暫」は「日」という字が入っているので、時間を意味する……と覚えると、「漸」と区別しやすいでしょう。

(3)「悉く」も間違いやすい

「暫く」とともに、「ようやく」と読んでしまいやすいものに「悉く」があります。これは「ことごとく」と読み、意味は「残らずすべて」。使い方としては「悉く失敗する」(全部失敗する)などがあります。

4:漸くの使い方例文

(1)苦労した様子を表す

時間や手間がかかった末に実現した場合などに使います。

「子供のころからの夢が漸く実現する」

「何年もかけ、漸く完成した」

(2)徐々に、ゆっくりを示す

「漸く」は「やっと実現した」という意味で使用されることがもっとも多いですが、「徐々に・ゆっくり」という意味で使用することもできます。

「漸く寒さも落ち着いてきた」

(3)「かろうじて」のニュアンスで

「かろうじて」や「何とか」という意味で使うこともできます。

「電車に乗る時間に漸く間に合った」

これも、なんだかもやもやしてしまうかもしれませんが、構文的には正しいです。

5:漸くを英語で言うと?

「漸く」は英語で表現するなら、「finally」がいちばん適した訳し方になるでしょう。さらに「at last」も慣用句として使えます。「かろうじて」という意味では「barely」、「徐々に」という意味では「gradually」や「little by little」という表現もあります。

「Finally, work is finished.」(漸く仕事が終わった」

「At last, I finished.」(漸く終えた)

なお、「finally」は良いこと・悪いことの両方に用いることができる一方で、「at last」は、一般的には良い事柄にのみ用いるという特徴があります。

6:まとめ

中学・高校時代など、国語のテストに「漸次」「暫時」などが出題されると、「こんな言葉、実際の生活で使う場面なんかあるの?」と思っていましたが、実際にあるんですよねぇ。

例えば、議会や株主総会などのお堅い場面では、休憩を入れる際に、議長が「暫時、休憩します」と発言します。使う頻度が少なくても、イザというときに困らないように、ボキャブラリーは豊富にしておいて損はありません。