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夢をあきらめ続けた私がミスコンに出て漫画家になれたワケ【第12話・後編】ーシンデレラになれなかった私たちー

毒島 サチコ

毒島 サチコS.Busujima

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Case12:夢に選ばれず、夢をかなえた女性

名前:あんどうまみ(漫画家・イラストレーター)

日本のミスコンテスト「2012年度 ミス日本」において、準ミス日本を受賞。2015年(株)KADOKAWAコミックエッセイ大賞を受賞し、漫画家デビュー。コミックエッセイ「コミュ力低めでちょいオタな私が準ミス日本になるまで」が発売中。

「ミス日本」へ参加

私の人生は、選ばれなかったことの連続でした。漫画家の夢を諦め、大学受験にも失敗。就職活動の際も、志望していた業種からはことごとく不採用通知が届きました。

そんなとき、舞い込んだ「ミス日本」ファイナリストのチャンス。参加を決めたのは彼のこんな一言がきっかけでした。

「どうせマミは……」

でも、その言葉は、自分自身が夢から目をそむける口癖だということに気がついたのです。

「どうせ漫画家になれない」「どうせ挑戦しても」「どうせ私なんて……」

出場することがきっかけで、選ばれなかった人生を、変えられるかもしれない。挑戦することをあきらめていた人生が変わるかもしれない。そして、少しでも彼の「自慢の彼女」になれたら……。

そう思って私は、「ミス日本」に参加を決めました。

ー前編はコチラー

「ミス日本」に参加

いざ、コンテストが始まってみると、驚きの連続でした。

ファイナリストの参加者たちは、地区予選を勝ち上がってきた人ばかり。容姿も性格もハイレベルな女性たちが、女性としての美しさを、内面、外面ともにみがきあげていました。

「とんでもないところにきてしまったな……どうせ私なんて、選ばれるわけない」

そう、いつもの口癖が飛び出しそうになりました。でも、「ミス日本」に参加するにあたってひとつ決めていたことがありました。

それは「どうせ私は……」という言葉を頭の中で発しないこと。

今できることを全部やってみよう。その結果選ばれなくても、できることは全部やったと思えるはず……。

準ミス日本になって訪れた変化

ウォーキングやセルフプレゼンテーションのレッスンから日本の歴史の勉強まで、大会に参加するにあたり、さまざまな授業を受けました。

ミス日本候補生として過ごした2か月間、今までの人生で体験したことのない充実感に満ちていました。

本来、目立つことが苦手だった私ですが、他のファイナリストたちの熱気や意欲に感化され、「自分が決めたことだからやり切ろう」と決めて、自分のできる限りの力を尽くしました。

いつもだったら「どうせ私なんて」とあきらめてしまう場面がたくさんありました。でも、「どうせ禁止!」と自分に言い聞かせることができたのは、他の候補者たちと「みんなで頑張ろうね!」と声を合うことで、前向きでいられる自分をつくってくれたからかもしれません。

その結果、「準ミス日本」を受賞することができたのです。

そしてこの受賞をきっかけに、自分の中に大きな変化が訪れました。

自分と、そして夢と向き合う

準ミス日本として活動する任期は1年ありました。その間、「ミス日本」に出場した仲間たちは、アナウンサーになったり、TVに出たりと、さらなる夢へと挑戦し続けていました。

私が「ミス日本」に出場した理由は、タレントやアナウンサーになりたいからではありませんでした。彼の存在と、自分自身の性格や今までの人生を変えたかったから。

彼がきっかけとなってつかむことができた賞。もちろん、彼は私が準ミス日本になったことを喜んでくれました。それは自分の中で大きな自信につながりました。「どうせ私は…」と逃げてきた人生の中で出会った彼が、私が変わる大きなチャンスをくれたのです。

彼と向き合えた今、私は、自分自身の人生とも向き合おうと思いました。

自分の中に、無理やり封じ込め、ずっと目を背け続けていたこと。

「今の私なら、挑戦できるかもしれない」

それは、漫画家になりたいという夢でした。

ふたたび漫画家を目指す

一度はあきらめた漫画家という夢。

その夢をふたたび追いかけようと思ったとき、偶然、雑誌でコミックエッセイの募集を見つけました

コミックエッセイ……。

大好きな空想の世界ではないけれど、私が今まで目を背けてきていた現実を書くことができるかもしれない。

自分よりも絵がうまい人はたくさんいる。だからこそ「自分にしか描けないもので挑戦しよう」と思ったのです。

そしてテーマに選んだのは「ミス日本」での経験でした。

「ミス日本のことを描ける漫画家は私しかいない!」

私は思い切って、ミスコンの事を漫画にして応募しました。

内容は、ミス日本の意外な舞台裏や、そこで学んだダイエットやウォーキング、自分磨きのノウハウなどを詰め込みました。

その結果、コミックエッセイ大賞をいただき、本を出版させて頂くことになったのです。

タイトルは「コミュ力低めでちょいオタな私が準ミス日本になるまで」。そのタイトルには、私の人生のすべてが詰まっていました。

「ミス日本」への参加。それがきっかけとなっての漫画家デビュー。

選ばれない人生の中で「ミス日本」というチャンスに挑戦したことが、かつて選ばれなかった世界にも選ばれるきっかけになったのです。

考察:人生はオーディションの連続

「今思えば、漫画家になることを一度あきらめたから、ミス日本に出ることができたし、夢だった漫画家にもなれたんです。だから、彼と、彼のステキな幼馴染さんには、本当に感謝しています。まあ、その彼とはもう別れちゃいましたけどね(笑)」

取材の後半、あんどうさんはこう語りました。

「私は引っ込み思案でな性格で、うまく人と話ができませんでした。漫画家になる夢も、大学受験も、就活も失敗し、選ばれないことばかりの人生だったんです。でも、人生というオーディションに挑戦し続けることで、夢には近づくことができる」

準ミス日本を経て、漫画家デビュー。一見、選ばれ続けてきたように見える彼女ですが、その人生は挫折と挑戦の繰り返しでした。

「私の人生は、選ばれなかったことの連続。だからこそ、今の私があるんです」

【今回のゲスト】

あんどうまみ

海道岩見沢市出身。北海道を中心に活動するローカルタレント、漫画家、エッセイスト。2012年「ミス日本コンテスト」に出場し準ミス日本を受賞。著書に「コミュ力低めでちょいオタな私が準ミス日本になるまで」(2015年、KADOKAWA)がある。若い女性を中心に人気のイラストを紹介したインスタグラムのフォロワー数は13万人を超える。

【筆者プロフィール】

毒島サチコ


photo by Kengo Yamaguchi

愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「MENJOY」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。

【前回までの連載はコチラ】

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次回:5月9日土曜日 更新予定

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