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離婚後の養育費はいつまでもらえる?養育費の相場と計算方法

並木まき

並木まきM.Namiki

目次

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1:養育費とは?

まずは「養育費」の正しい意味をおさらいしてみましょう。辞書を調べると、次のように載っています。

よういく‐ひ【養育費】 

子供の養育(衣食住や教育)に要する費用。特に、実際に子供を育てる者が、扶養義務のある法律上の親に対して請求するものや、離婚した父母のうち子供を育てる者が、もう一方の親に対して請求するものをいう

出典:デジタル大辞泉(小学館)

子どもを引き取った側が、子どもが健全に生きるための費用として別れた相手に請求するお金、と考えればよさそうです。

2:養育費なしのこともある?離婚養育費の相場

さっそく、離婚問題に詳しい高橋弁護士に、養育費の実態について聞いてまいりましょう。

(1)養育費は話し合いで決めるのが基本

高橋「養育費は、一時的には両親の話し合いで決めるものです。そしてその話し合いがまとまらない場合に、家庭裁判所での調停等の手続で養育費が定められることになります。

養育費の金額ですが、話し合いで決める場合に決まりはありません。つまり、相場というものは存在しないと言えます。請求額はどんなに多くても、どんなに少なくても問題ありません。ただし、あまりに法外な金額設定をすれば、なかなか合意に至らないでしょうし、合意を得たところで、その後、支払えなくなるだけでしょう」

(2)話し合いがまとまらない場合には「養育費算定表」もある

高橋「話し合いで決まらない場合、家庭裁判所での調停等では“養育費算定表”というツールを使い、これに夫婦双方の収入を当てはめて適切な養育費の金額を定めることになります。このケースでは、養育費の相場=“養育費算定表”ということになると思います。

養育費算定表は、裁判所のホームページにあり、例えば、子ひとりで、非監護親(養育費を支払う義務がある人=義務者)の年収が2000万円、監護親(子供を育てるための費用を請求できる人=権利者)の年収が0円(=専業主婦)だった場合、養育費の目安は24万円から26万円となっています」

(3)養育費が「ゼロ円」もありえる

高橋「なお、養育費がゼロということも十分あり得ます。非監護親にお金がない場合や相手からもらったお金で子を育てたくないと考える場合、離婚時の財産分与や解決金として多額のお金をもらっている場合など、両親の合意のもと、継続的な養育費の支払いが発生しないケースも実際に多くあります。

また、養育費は非監護親に収入があること、収入が得られることが前提。非監護親が病気等が理由で就労できない場合には、養育費なしということもあり得るでしょう」

3:離婚養育費の計算方法

高橋「先ほど述べたとおり、夫婦での話し合いがまとまらない場合は、調停等において“養育費算定表”を使った養育費の金額設定がなされます。この表に、非監護親と監護親の収入を当てはめると、養育費の適正額が算出されるようにできています。

計算のもととなる収入ですが、給与所得者の場合、前年の源泉徴収票や給与明細、あるいは市民税県民税課税証明書、個人事業主の場合は確定申告書を用いることが多いです」

4:離婚養育費を多くするには?

(1)交渉次第で算定表水準以上での合意は可能

高橋「夫婦の協議で養育費を決める場合は、金額設定は自由です。ので、非監護親を説得して“養育費算定表”の水準以上の金額で合意することができます。

自分の子はかわいいはずなので、非監護親と子の面会を認めるなど、監護親としてやるべきことを誠実にすれば、養育費の水準も高めに設定されるかもしれません」

(2)算定表どおりが多いが特別な事情が考慮される場合もある

高橋「ただし現実として、相手に対する悪感情が強く、十分な配慮や誠実な対応をする心の余裕がないケースも多いです。そのような場合は、養育費算定表通りになる可能性が高いと思います。

なお、相手の裏収入などを明らかにすることができれば、養育費算定表を利用する場合でも、養育費は高くなります。また、子どもが病気である場合や、子どもが希望する進路に高額な学費がかかる場合などは、養育費が高く設定される可能性があります」

5:離婚養育費はいつまでもらえる?

(1)「20歳まで」の取り決めが多い

高橋「養育費は“子が成人に達する月まで支払う”という合意がなされていることが多いです。現在の法律では成人=20歳ですので、子が20歳に達するまで養育費の支払いを受けられるということになります」

(2)2022年の法改正への備えを考慮しよう

高橋「一方、高校卒業後、直ちに就職をして収入を得ているような場合は、経済的に自立していると評価され、養育費を請求することができなくなる可能性もあります。

なお、2022年4月1日から成人年齢が引き下げられ、成人=18歳となります。もっとも親に扶養を求められるのは、子が未成熟で経済的に自立できていない場合。ですので、法務省でも、成人年齢が18歳に引き下げられても、養育費の支払い時期が18歳で終わるということにはならないと説明しています。

養育費を支払う側から“18歳で成人になったのだから養育費は支払わない”と言われるリスクもあるので、合意書などを作成するのであれば“満22歳に達する月まで”などと、具体的な終期の設定をしておくほうが望ましいと思います」

6:離婚養育費を払ってもらえないときには?

(1)養育費の未払いは社会問題

高橋「養育費の未払は社会問題になっています。養育費というのは、子を単独で養育する監護親が生活を維持するのに必要不可欠な収入です。

しかし、非監護親が働けない場合、働けるけど働いていない場合、働いていても自身の生活維持にギリギリの収入しかない場合、再婚して新たな家庭を築いているため支出超過になっている場合、ともかく養育費を支払う意思がない場合、そもそも所在不明の場合など、養育費不払のケースはあとを絶ちません。

(2)困ったときは弁護士の無料相談の活用を

高橋「もしも養育費を払ってもらえない場合、まずは弁護士の無料相談に行きましょう。民事執行法の改正によって、非監護親に財産状況を開示させたり、自ら財産調査を行うことが容易になりました。

働いていない人を働かせることはできないので、現実に収入がない場合、やはり養育費が取れないということもあり得ます。しかし、少なくとも収入があるのに逃げているだけの非監護親の逃げ得は許さないことになるはずです」

7:離婚をしても子の親であることには変わらない

養育費を取り決めるときには、夫婦間の仲が最悪なところまで悪化していて、まともな話し合いすらできない場合も多いでしょう。しかし離婚をしても、双方が子の親であることには変わりません。子どもが健やかに育てるよう、養育費は最低限の親の義務ともいえるでしょう。

【参考】

裁判所

取材協力高橋 裕樹弁護士

アトム市川船橋法律事務所弁護士法人代表弁護士。岩手県盛岡市出身。2008年(平成20年)弁護士登録。千葉大学法経学部法学科卒業。