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性格の不一致で離婚するとどうなる?慰謝料や財産分与について弁護士に聞いてみた

並木まき

並木まきM.Namiki

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目次

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1:性格の不一致なんかで離婚したくないけれど…

結婚してみたものの、一緒に暮らしてから配偶者に対し「性格が違いすぎて、共同生活を送れない……」と思う人もいます。

けれど「性格の不一致で離婚」となると、浮気やDVなどが原因での離婚に比べて、周囲からは「努力すれば、なんとかなったんじゃない?」というように、安易に離婚したと受け取られがちなのも事実。

そのため「性格の不一致では、離婚したくないな」と思う人も多いのが実態でしょう。

2:弁護士に聞いた!慰謝料や親権、養育費の支払いはどうなる?

しかし現実には「性格の不一致」は当事者にとって、深刻な問題。運命共同体であるパートナーと性格がズレが大きければ、別々の生活を歩みたくなるもの。そこで、離婚問題に詳しい高橋弁護士に話を聞きました。

(1)慰謝料はどっちが払う?

高橋「離婚をすると、それだけで慰謝料がもらえると思われている女性が多いと感じますが、それは誤りです。

慰謝料は、不倫やDVなど離婚の原因をつくった夫婦の一方が、相手方の被った精神的苦痛に対して慰謝するために支払う損害賠償金です。つまり、悪いことをした側が払うもの。夫婦のどちらも払う可能性があります。そして、離婚原因がお互いに起因する場合……つまりは“単なる性格の不一致”での離婚であれば、慰謝料の問題は生じないことが多いです」

(2)親権、養育費はどうやって決める?

高橋「養育費は、子を監護していない親(非監護親)が、子と同居するなどして現実に養育している親(監護親)に対して支払う扶養料です。

一方、子の法定代理権である親権と、子を監護養育する監護権は異なるので、理論的には“親権者=養育費をもらえる”という単純な関係ではありません。しかし実際には親権者が監護権者も兼ねているケースが圧倒的に多いので、その前提でお答えします。

親権者を父母どちらにするのかを決する要素として、家庭裁判所は、

1.監護に向けた状況

2. 子に対する愛情と監護の意思

3. 親権者になろうとする親の心身の健全性

4.子の年齢、心身の状況

5. 環境の継続性

6. 子の意思

などを考慮しています。そして、1~6の観点からは、出産後育児を中心的に担っている母親が有利になることが多いでしょう。

次に養育費ですが、最高裁判所が出している養育費算定表を用いて、父母それぞれの収入から、形式的に算出されているのが実情です。今後、養育費を請求する場合や、今支払いを受けている養育費に不満がある場合などは、相手の収入資料を取得して“養育費算定表”にあてはめてみていただければと思います。これは、離婚するまでの生活費(婚姻費用)でも同じです」

(3)財産分与はどうなる?

高橋「財産分与というのは、婚姻期間に夫婦で築き上げた資産を分け合う手続きです。結婚後に取得した預貯金、不動産だけでなく、退職金や生命保険解約返戻金なども財産分与の対象になります。

テレビなどで有名人が離婚する場合に“慰謝料〇千万円”などと報じられている場合は、慰謝料ではなく、この財産分与の金額のことを指していると思われます。なお、不倫などの離婚原因をつくった側からでも、財産分与の請求をすることはできます。夫婦で築き上げた資産の半分は自分のものですから、自分のものを渡してもらうことと、離婚原因が何であるかは関係ありません」

3:性格の不一致で離婚して後悔しない?エピソード3つ

(1)後悔はゼロです!

「あまりに性格が異なる夫と、結婚生活3年でピリオドを打ちました。人生の中で大事にしたいものから、親との関係についての考え方まで、まるきり異なったので、離婚して後悔はありません。というより、むしろ離婚してストレスがなくなり、カラダも健康になって大満足しています」(30歳女性/アクセサリー制作)

(2)たまに寂しいけれど…

「相手の浮気や借金ではなく、単純な性格の不一致だけで離婚をしました。元夫とは、交際中はうまくいっていたし、相性も悪くなかったけれど、共同生活を送れる相手ではありませんでした。

たまに寂しいなって思うこともありますが、結婚中は毎日のように口論ばかりしていましたし、イライラも募っていたので、離婚したほうがお互いのためだったと思っています」(35歳女性/PR)

(3)金銭的につらい

「性格の不一致を理由に、8年間の結婚生活を終えました。当初は、離婚後もなんとかそれまでの生活水準を維持できると考えていましたが、実際には甘かったです。

私は非正規雇用で働いているので、共働きのときより、生活水準が目に見えて下がりましたね。離婚そのものに後悔はしていないけれど、金銭的にはしんどいです」(46歳女性/派遣)

4:性格の不一致での離婚の解決金って何?

性格の不一致による離婚の場合、「解決金」という名目で金銭授受がなされる場合もあります。この「解決金」について、高橋弁護士に解説していただきます。

高橋「離婚時に相手にお金を払わせるとすれば、上記のとおり、慰謝料・養育費(婚姻費用)・財産分与のいずれかです。しかし、実際のところ、それぞれの金額を検討して協議をするとなると、資料の収集や確認に時間がかかることや、お互いの言い分が異なることが多く、その結果協議のために、何度も話し合いを重ねなければならなくなります。

また、単なる性格の不一致では慰謝料は発生せず、結婚期間が短ければ財産分与もないということがよくあります。

そういう場合に“いろいろあるけど、ざっと100万円支払います”というように、離婚後の生活援助など諸々を考慮して“丸めた”金額で合意をして離婚に至るということがあります。この場合に支払われるお金が解決金とよばれるもの。手切金に近いニュアンスのときも多いと思います」

5:「性格の不一致」による離婚は少なくない

性格の不一致を理由とした離婚は、決して少なくないのが現実です。大人になってからの性格は、努力ではなかなか変えにくいもの。配偶者と性格が合わないとなると、家庭生活がストレスにしか感じないのも現実です。

我慢できないほどの不一致を感じたなら、離別するというのも、自分の幸せのためには最善の方法かもしれません。しかしお金やその後の生活などについては、冷静に計算する必要があるでしょう。

取材協力高橋 裕樹弁護士

アトム市川船橋法律事務所弁護士法人代表弁護士。岩手県盛岡市出身。2008年(平成20年)弁護士登録。千葉大学法経学部法学科卒業。