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港区おじさんに本気で恋した女子大生【第6話・後編】―シンデレラになれなかった私たちー

毒島 サチコS.Busujima

ケース6:港区女子になれなかった女子大生

名前:カナ(21歳・大学生)

広島県出身。再放送で見た「東京ラブストーリー」 に憧れて18歳で上京。夢は「東京のイケている彼」と付き合うこと。

21歳の時、初めてできた彼氏は17歳年上の「港区おじさん」。都合のいい相手だと思っていたはずの相手との恋。その結末は……。

ー前編はこちらー

初めての彼氏は17歳上のおじさん

六本木のタワマンパーティーで知り合った、17歳も年上の彼と付き合い始めて、私はいろいろなところにデートに行きました。

大学生のアルバイト代では到底いけないような高級レストランや、銀座や六本木でのショッピング、そして海外旅行まで……。

夢のような毎日でした。

夢にまでみた「東京のイケてる彼氏と付き合うこと」が、年齢差はあるものの、実現したような気がしたのです。

彼は私にいろいろなものを買い与えてくれました。髪の毛を染めたことすらなかった私は、彼のおすすめの表参道のサロンに通うようになり、身に着けるものも、自分の年齢プラス10歳くらいの女性が着るような、ブランド品ばかり。

一方、心のどこかで「こんな年の離れたおじさんを好きになるなんて恥ずかしい……」という思いは消えませんでした。友人たちとの恋バナでも、彼氏が17歳も年上だなんて言ったら、「どうせお金目当てでしょ」と言われそうで……口にできなかったのです。

でもその反面、彼に対しての気持ちはどんどん大きくなっていきました。最初は贅沢をさせてくれる彼のことを、ある意味「都合のいい相手」だと思っていたのに、仕事に対する悩みを聞いたり、無邪気な一面を見たりしているうちに「彼のことをずっと支えたい」とさえ思うようになりました。

そして、付き合って1か月ほど経ったときには、彼の家にいりびたり、半同棲状態になりました。友人もどんどん少なくなりました。授業以外の時間はすべて彼と過ごし、就活の相談も、大学のレポートだって、彼にやってもらうようになっていたのです。

大好きでハマっているのに、どこかで、「年上だからいろいろやってもらって当たり前」「おじさんと付き合ってあげているんだから、そのメリットは享受しなて当然」……そんな気持ちがあったのも事実です。

変わらなかった「港区おじさん」

でも、そんな幸せな日々は3か月も続きませんでした。

彼の浮気が発覚したのです。そしてその相手は、彼と出会ったパーティに私を誘ってくれた、2回しか会ったことのない友人だったのです。

何気なく見ていたその子のインスタのストーリーに映り込んだラグの模様が、彼の家にあるものと完全一致。それは、まぎれもなく彼の部屋に泊まって迎えた朝の様子でした。

「どうして浮気したの?」と彼を問い詰めたけど、彼は「ごめんね」と言って、それ以上何も言いませんでした。

私はそれから、彼の部屋にもっと入りびたるようになりました。彼を信じたいという想いと、また同じことを繰り返すのではないかという疑いで、動けなくなってしまったのです。

それでも、急に連絡がつかなくなったり、一晩中帰ってこなかったりすることが増えました。私はひとりで、彼の帰りを待ち続けていました。

もともと人付き合いが得意ではなかった私は、もっと友達と会わなくなっていきました。彼の家から1時間半もかかる大学にも通うのが面倒になり、バイトもせず、生活費すら彼に負担してもらうようになりました。そしていつしか、彼がいないと生きていけないという気持ちになっていました。

私、何をしているんだろう

そんなとき、広島の両親から連絡がありました。

「先週、野菜を送ったけど、ずっと不在で戻ってきたよ。忙しいの?」

そのころの私は、彼の家に入り浸り、自分の家に帰るのは週に2日ほど。

いつの間にか、彼と付き合い始めて半年がたっていました。少し前までの私は、田舎の両親からのLINEがきても、気に留めていませんでした。「忙しいから、いらない」と。

でも、彼の帰りを待ち続けていたこの日、なんとなく、両親に対する罪悪感が生まれたのです。

両親は、まさか私がこんな年上の男性に入れ込んでいるなんて、思ってもみないでしょう。

彼と過ごすようになって、両親に連絡する頻度も減りました。今まで恋愛の相談も頻繁にしていた母にも、反対されるとわかっていたからこそ、彼の話はしていなかったのです。

ぐるぐると考えているタイミングで、父からこんなLINEが飛んできました。

「東京は変な男がたくさんおるやろ(笑)。引っかからんようにな」

冗談交じりの、軽い気持ちで送ってきたLINEだったのかもしれません。

でも、私の中で何かが壊れる音がしました。

彼のことを、父のいう「変な男」だと思ったわけではありません。父からのLINEにどう返信していいか分からなかったのです。父の(笑)には、「自分の娘が、変な男に振り回されるわけがない」という意味が含まれているような気さえしたのです。

「私……東京に何しに来たんだろう……

父に近い年齢の人に入れ込み、浮気されて、それでもすがりついて、生活のすべてを無駄にして……。そんな自分が情けなくて情けなくて、父のLINEを開いたまま、ワンワン泣きました。

彼のことを、好きすぎるがあまり、束縛や嫉妬が激しくなり、いつの間にか自分の心と、相手の心まで壊しそうだと気づきました。

別れはあっさりと

その父からのLINEをきっかけに、彼に「別れたい」と伝えました。

すると「そっか。いままでありがとね」と、彼はすんなりと受け入れました。

「え……それだけ……

私はあまりにもあっけない恋の終わりに、悲しさを通り越して、むなしさを感じました。

彼は「来るもの拒まず去る者追わず」というスタンスだったのでしょう。

でもきっと、港区ではそれが当たり前のことなのです。

ほどなくして、彼は私の友人と付き合ったようです。でも、それも長続きしなかったようで、1年後、彼よりさらに年上の別の男性と結婚して、その結婚相手のお金でネイルサロンを開業したと聞きました。

私がキラキラしていたのは、たったの半年間。残ったのは、20代の貴重な時間を失った切なさと、狂ってしまった金銭感覚だけでした。

 

考察:港区女子になれなかった私

普通の女子は、踏み入れてはいけない世界

「私は、本当にフツーの女の子だったんだと思います。誇れるものは若さしかなかったですし」

カナさんは取材の後、そう語りました。

「この失恋話をすると、どうせお金目当てだったんでしょ、っていつも言われます。でも私は、本気で彼のことが好きだったから……。

でも向こうは、ただ若い子と遊びたかったんだと思います。でもそれは彼が悪いわけじゃないんです。あのパーティの出会いに、本気の恋を求めた私が間違っていたんですよ」

現在、カナさんは、大学を卒業し、都内のデザイン会社に勤めています。

「あの恋で学んだことはふたつ。若さと引き換えに、お姫さまにしてくれる男性はいても、それは長くは続かず、いつか夢は覚めてしまうということ。

そして、東京では恋愛に依存しすぎると、辛い目にあうということ。まぁ、私が依存する相手を間違えたっていうのもありますけど(笑)」

憧れと幸せ

「憧れは憧れのままのほうが幸せだったって思うこともあります。彼と付き合った後、普通の感覚を取り戻すまでに時間がかかりましたから……」

春になれば、また多くの女性が、東京にあこがれを抱いて、上京してくるでしょう。筆者もまた、そうであったように……。

華やかでドラマのような都会の日常……。そんな憧れの世界を知ることは、はたして幸せなのでしょうか。

「憧れの世界は、遠くから見ているほうがよかったのかなって思います。多分、私の友人は、そんな憧れの世界で生きていく覚悟があった。というか、憧れとすら思っていなかったのかもしれない。

私にとっての憧れの場所は、彼女にとっての恋愛の主戦場だったんです。私が背伸びしすぎていたのかなって。まぁ、結果論なんですけどね」

カナさんは、取材の最後をこう締めくくりました。

「今は、食べたい料理も、欲しいアクセサリーも、絶対に自分で買います。そのほうが幸せをかみしめられるから」

今は大好きな彼氏がいて、結婚資金を貯めているのだといいます。シンデレラになれなかった経験が、彼女を成長させたのかもしれない……。そう感じました。

 

筆者プロフィール

毒島サチコ

photo by Kengo Yamaguchi

愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「Menjoy!」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。

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次回:2月8日土曜日 更新予定

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