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港区おじさんに本気で恋した女子大生【第6話・前編】―シンデレラになれなかった私たちー

毒島 サチコS.Busujima

ケース6:港区女子になれなかった女子大生

名前:カナ(21歳・大学生)

広島県出身。再放送で見た「東京ラブストーリー」 に憧れて18歳で上京。夢は「東京のイケている彼」と付き合うこと。21歳のときに初めての彼氏ができる。

 

憧れていた世界に飛び込んだ日

今から3年前の夏。「港区女子」という言葉が流行していたときです。

21歳だった私は、キラキラ女子のあこがれの場所である、港区に関する記事を読み漁っていました。

「港区女子」とともに、当時話題になっていたのが「港区おじさん」。お金にも時間にも余裕があって、ある種、若い女性の都合の良い望みを何でもかなえてくれるような年上男性。

「こんな港区おじさんなんて、本当に存在するのかな……(笑)」なんて思いながら、記事やYouTube動画を見ていたことを思い出します。

当時の私の夢は、仕事をバリバリこなす女性になる事でも、幸せな家庭を築くことでもありませんでした。

私の夢はたったひとつ。

六本木ヒルズに住むような、お金持ちでイケメンと付き合うこと。東京の大学に来たのも、勉強をしたかったからではなく、ただ、ドラマに出てくるような、ハイスペックな男性と出会いたいという気持ちがあったからです。

こんな不純な動機で上京したと親が知ったら、どれほど怒ることでしょう。

でも、若かった私にとって、「東京のイケてる男性と付き合うため」という理由は、受験に対する意欲を最も高めてくれたのです。

晴れて第一志望の大学に合格。両親も快く、故郷の広島から東京に送り出してくれました。

タワマンパーティで出会った彼

その日、私は、アパートを借りていた相鉄線の湘南台駅から、六本木駅に向かっていました。

「今夜、パーティがあるんだけど来ない?」

一度しか会ったことのない友人からの誘いを受けて、1時間半かけて、パーティ会場に向かっていたのです。

パーティの会場は、港区にそびえ立つタワーマンションの29階。広いエントランスを抜けると、エレベーターホールがあって、セリーヌのバッグを下げた友達が立っています。

「来てくれたんだね~! いろんな人紹介するね」

そこには、東京タワーが一望できる大きなガラス窓が広がっていました。

友人は部屋に私を招き入れ、慣れた手つきでお酒を渡してくれました。

そこは広めの3LDKで、男女合わせて15人程度の人たちが、お酒を飲みながら、楽しそうに会話していました。

「私の大学の友人のカナちゃんです! かわいいでしょ~!」

部屋に入ってすぐ、いちばん手前に座っている男性3人に向けて、友人はテンション高めに私を紹介してくれました。

友人は私の耳元で「この人たち、私たちの学イベ(※学生イベントの略)に出資してくれている人たちだから、つながっておいたほうがいいよ」と囁きました。

私は戸惑いながらも「カナです。よろしくお願いします」と小さな声で挨拶しました。

ふたりの男性は「よろしくね。ここどうぞ」と軽い感じで、私を輪の中に入れてくれました。自分よりも20歳くらい上で、40代前半くらいでしょうか。キツめの香水とタバコとお酒のにおいが鼻をつきました。

「あぁ、これがあの港区おじさんか……」

私は心の中でそう思いました。それと同時に、父親とそれほど歳の変わらない、絶対に恋愛対象にはならなさそうな男性たちが、若い女性と楽しく飲んでいることに違和感を覚えました。

ひと回り以上も年の離れた女性を口説こうとする男性と、その男性たちに媚を売っている女性たち。その姿は、見ていて決して気持ちのよいものではありません。

私は、パーティ開始早々、居心地の悪さを感じて、黙ってうつむいていました。

「来ないほうがよかったかな……」

そんなとき、私に声をかけてきた男性がいました。

好きになるわけない…その自信はいつしか…

「みんな知り合いじゃけえ、気は使わずに!」

バリバリの広島なまりを聞いて、一瞬、地元に戻ったような気持ちになりました。

東京で、広島弁を聞くなんて……。

「もしかして……広島の方ですか? 私、広島出身なんです」

私は、声をかけてきたその男性に、前のめりに聞いていました。

「えー! 俺も広島! すごい偶然じゃね!」

その男性は、大学時代まで広島で過ごし、仕事の関係で上京。私よりも17年上でした。パーティになじめなかった私は、地元トークで盛り上がれる彼といろいろな話をしました。地元のこと、上京してきた理由(WEBデザイナーになりたいと嘘をつきましたが)、そして恋愛のこと……。

その人は、六本木で不動産会社を経営していると言いました。真っ白なシャネルの時計が、イケイケ感を醸し出しています。

「こんなに広島の話で盛り上がれるなんて嬉しいわ! 今度ごはん行こうよ」

彼はそういって、慣れた手つきでスマホを操作し「この店、広島料理が食べられるんだよ」といって、都内の高級料亭のサイトを見せてきました。

それは、私のアルバイト代ではとうてい行けなさそうなお店でした。

「ちょっと年上すぎるけど、ごはんに行くくらいならいいか」

私は、彼と会う約束をしました。

都合のいい彼から恋人に変わった

それから彼とは、週に一度くらいのペースで会うようになりました。

おいしいごはんを食べさせてくれて、服も買ってくれて……。そんな彼のことを、最初は都合のいい人だと思っていました。

彼の持つ高級車で、何度もお台場へドライブに行きました。ロマンチックな夜景を見ていると、「今、私キラキラしてる……」と自分までも輝いているような感覚になりました。隣にいるのは、都合のいいおじさん。でも、何度も「恋人らしいデート」を重ねていくうちに、彼への気持ちは、いつしか恋愛感情へと変わっていったのです。

「俺と付き合ってよ」

お台場で彼から告白されたとき、私は黙って頷いて、そのまま彼の住むマンションで一夜を過ごしました。

 

彼は、私にとって初めてできた彼氏でした。

 

―後編へ続くー

筆者プロフィール

毒島サチコ

photo by Kengo Yamaguchi

愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「Menjoy!」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。

 

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次回:2月1日土曜日 更新予定

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