掲載
不倫とはそこはかとない関係?「そこはかとない」の意味と使い方
松田優Y.Matsuda
目次
隠す1:「そこはかとない」の意味は?漢字で書くと?類語は?
(1)そこはかとないの意味は?漢字だとどう書く?
「そこはかとない」を辞書で調べると、このように書かれています。
そこはかと‐な・い
何となくある事が感じられるさま。どこがどうということでない。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
明確ではないこと、上手に説明できない事柄を伝えたいときに使います。例えば「なんか疲れた」というより「そこはかとなく疲れた」のように使うと、心なしか上品に感じられます。
ちなみに「そこはかとない」は、漢字で「其処は彼と無い」と書きます。つまり「其処」にいるのが「彼」=「誰」なのかはっきりし「無」い、ということです。
(2)そこはかとないの類語は?
続いて、「そこはかとない」の類語をいくつかあげていきます。
なんと‐なく【何と無く】
言動などに、はっきりとした理由・目的がないさま。なんとはなしに。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「そこはかとない」で伝わらないときには、「なんとなく」と言い換えるのが最もシンプルで伝わりやすいかもしれません。
ほかにもいくつか当てはまる言葉があるので、見ていきましょう。
ふ‐せんめい【不鮮明】
はっきりしないこと。また、そのさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
おぼろ‐げ【×朧げ】
はっきりしないさま。不確かなさま。「朧げな記憶」
[補説]「おぼろけ」が、月などについて「おぼろ(朧)」と掛け詞に用いられ、両者混同して生じた語。出典:デジタル大辞泉(小学館)
ばく‐ぜん【漠然】
ぼんやりとして、はっきりしないさま。広くてはてしのないさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
どれも、はっきりとしていないことや、明確な表現が思いつかないときに使う言葉ですね。
2:不倫はそこはかとない関係?「そこはかとない」を使った例文5つ
それでは実際に、「そこはかとない」を使った例文をご紹介します。
(1)彼と彼女の間にはそこはかとない怪しい雰囲気があった
彼と彼女の間に、何とは言えないけれど、怪しい雰囲気が見られたという文章です。もしかしてあのふたりには何かあるのでは……と憶測している様子を表しています。
第三者から見て「あのふたりは不倫しているのかも」と憶測するときに使える表現ですが、不倫そのものを「そこはかとない関係」と表現するのはちょっと違うかもしれません。不倫を匂わせるような表現としては使えるでしょう。
(2)そこはかとない春の気配を感じる
少し春めいた風が吹いたり、春の花を見かけたりしたときなど、春が近づいてきているかもということを表す文章です。もちろん春だけでなく、「暑さが落ち着いて、そこはかとなく秋を感じる」といった使い方もできますね。
他にも「そこはかとなく花の香りがする」といえば、目に見えないけれどどこからか花の香りが漂ってきている情景を表現できます。
(3)この女優が人気の理由はそこはかとない知性だ
頭脳明晰でいかにも秀才なタイプではなく、なんとなく知性がにじみでているといった表現です。
「そこはかとなく知性にあふれた文章」といったように、明確に理由は言えないけれど知性を感じ取ったときに「そこはかとなく」を使うとわかりやすいでしょう。
「なんとなく知性にあふれている」というのも同じ意味なのですが、印象がだいぶ異なりますね。
(4)真っ暗な夜道にそこはかとない気持ち悪さを感じた
明確は理由はわからないけれど、なんとなく気持ち悪く感じる……といった表現です。人気がなくてうす暗い場所って不審者がいるのではとか、おばけがでるかも、とちょっと不安になることがありますよね。夜道が怖くてなんか不気味……というときには「そこはかとない」を使うとぴったりでしょう。
(5)そこはかとなく書いた日記
「つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」
これは有名な徒然草の冒頭です。その一節、「そこはかとなく書きつくれば」とは、「まとなりもなく書く」「あてもなく書く」といった意味です。
思いついたことをだらだらと書くというような使い方です。
3:「そこはかとない」以外にも!知っているようで知らない言葉5つ
「そこはかとない」以外にも、意味を正しく理解していない人が多い日本語はわりとあるものです。いくつか例をあげていきます。
(1)おざなり
おざ‐なり【▽御座なり】
いいかげんに物事をすませること。その場だけの間に合わせ。また、そのさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
おざなりは、いい加減な様子のことです。
「おざなりな対応をすると見捨てられるよ」や「おざなりに作業をする」と言ったりします。手を抜いていい加減な態度や行動をするのはあまりよくありませんね。
似た言葉で「なおざり」もありますが、こちらは何もしてない様子を表し、意味が違ってきますので、気をつけましょう。
(2)二の舞を演じる
「あいつの二の舞になるなよ」といった言い方をすることがあるかと思います。同じような失敗をしないようにといった意味で使われています。
に‐の‐まい【二の舞】
1 雅楽。唐楽。壱越(いちこつ)調で古楽の中曲。舞は二人。「安摩(あま)」に引き続いて、それを見ていた咲面(えみめん)の老爺と腫面(はれめん)の老婆が、安摩の舞をまねてこっけいに舞う。「安摩」の答舞。
2 人のあとに出てそのまねをすること。特に、人のした失敗を繰り返すこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
もともと「二の舞」とは、舞楽において「案摩(あま)の舞」のあと、案摩をまねて行う滑稽な舞のこと。そこから転じて、人の後に出てものまねをすることや、人の失敗を繰り返すことを意味するようになりました。
(3)采配を振る
采配(さいはい)を振(ふ)・る
陣頭に立って指図をする。指揮する。采配をとる。采を振る。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
采配とは、戦の大将が指揮をするのに使った道具。時代劇などで白いふさふさがついた棒を見たことがある人もいるのではないでしょうか。
「彼がリーダーとして采配を振ることになった」は「彼がリーダーとして指揮をとることになった」という意味になります。
采配は「振る」ものであって、「振るう」ものではありませんので、「采配を振るう」は誤用です。
(4)僭越ながら
せん‐えつ〔‐ヱツ〕【×僭越】
自分の地位や立場を越えて出過ぎたことをすること。また、そのさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「僭越ながら」という言葉は、「失礼を承知で出過ぎたことをいたしますが」という意味があり、目上の人に謙虚な気持ちを表現するときに使います。
大勢の前でのスピーチで、謙虚さを表現するときにも使います。自分より立場が上の人に対して使うものなので、へりくだる必要がないときに使うと嫌味になるので気をつけましょう。
(5)まことしやかに
「まことしやかにささやかれている噂」などと言ったりしますが、間違って使っている人も多い言葉です。
まことし‐やか【▽真しやか】
いかにも本当らしく見せるさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
辞書にもあるように、「まことしやか」は本当らしく見せるという意味なので、「まことしやかにささやいていること」は事実ではないかもしれないという意味です。「真実味が高い」という間違った意味で覚えている人もいるので注意しましょう。
4:まとめ
普段あまり使わない言葉だと、言葉の意味をちゃんと知らないで使っていることもありますよね。
本来の意味をちゃんと知って使えれば、知性が増します。言葉をきちんと覚えて、そこかなとない知性を身につけましょう。