掲載
「悪銭身につかず」の意味は「easy come easy go」と同じってホント?その真相
水野 文也F.Mizuno
1:「悪銭身につかず」の意味は?
ギャンブルや宝くじで得たお金など、苦労せずに手に入れたお金って、なぜかすぐに消えることが多いとされます。「もともと、なかったお金だから」という気持ちでパッと使ってしまうのだとか。そんなときに使われることわざが「悪銭身につかず」です。
でも、苦労せずに手に入れたからって、「悪銭」とは言いすぎな気もしますよね。まずは「悪銭」をデジタル大辞泉で調べてみましょう。
悪銭(あくせん)
1 悪いことをして手に入れた金。あぶく銭。
2 品質の低い貨幣。悪貨。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
悪銭は文字通り、悪いことをして手に入れたお金というのが、本来の意味なのですね。続いては、「悪銭身につかず」の意味を調べてみましょう。
悪銭(あくせん)身(み)につかず
盗み・賭け事などで得た金銭は、むだに使われてすぐになくなってしまう。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
そもそも、賭け事にハマる人が一生懸命貯金するとも思えないことから、ギャンブルを戒める意味もこめられていると言います。無駄遣いをせず、貯蓄に励むことを美徳とする日本らしいことわざとも言えるかもしれません。
2:「easy come easy go」の意味は悪銭身につかずなの?
(1)「悪銭身につかず」と「Easy come, easy go」はニュアンスが異なる
「悪銭身につかず」を英語で表現するとどうなるでしょう。インターネットなどで調べてみると、「Easy come, easy go」という言葉がこれにあたるとされている説が有力なようです。
とは言っても、この訳し方に違和感を感じる人も多いでしょう。たしかに、単語とその組み合わせをみても、「Easy come, easy go」には「悪銭」のような、不正を匂わせるような言葉はありません。
しかも、「悪銭身につかず」はあくまでも、お金に関して使う言葉ですが、「Easy come, easy go」はお金以外のものに対しても使う言葉です。
ここで、逆から考えてみましょう。「Easy come, easy go」のほうから和訳してみると、「簡単に手に入るものは、簡単に失う」という感じになります。これだけなら似ているのですが、そこには実は、「楽をして手に入れたから、簡単に失っても平気だよ」というニュアンスが込められています。
「悪銭身につかず」にある、戒めのニュアンスがないことが、いちばんの違いかもしれません。
(2) 「Easy come, easy go」は名曲でもおなじみの慣用句
「Easy come, easy go」はよく使われる慣用句です。
有名なところでは、QUEENの名曲「ボヘミアン・ラプソディ」の歌詞が頭に浮かぶ人も多いのではないでしょうか?
該当部分をざっと訳すと「オレは不幸ではあるけど、同情なんかいらない。なぜなら適当に生きているからさ」という感じになります。
この歌詞の「Easy come, easy go」が「適当に生きている」と訳されるように、開き直るときに使う慣用句とも言えるかもしれません。
3:「悪銭身につかず」を英語でいうと?
厳密に言えば、「悪銭身につかず」と「Easy come, easy go」は、ニュアンスが違うようですが、それでは、「悪銭身につかず」と同じ意味の英語の慣用句はほかにあるのでしょうか?
調べてみると「Ill got, ill spent.」というフレーズがありました。最も近いながらも、このイディオムは英語圏でもあまり一般的ではないようです。
ですので、「簡単に手に入ったものは、すぐになくなっちゃうよ!」といった意味で使うなら、やはり「Easy come, easy go」で表現しても良さそうです。
4:まとめ
「悪銭身につかず」と「Easy come, easy go」は完全にイコールではないようですが、そもそも完全に英訳や和訳ができない言葉もあります。例えば、日本語の「渋い」という言葉を英訳するのは難しいですよね。
ガチガチに考えず、「悪銭身につかず」と言いたいときは、「Easy come, easy go」を使ってしまっても良さそうですね。