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夫婦間の贈与って贈与税がかかるの?無申告ってばれるもの?ばれたらどうなる?を教えます

中田綾美

中田綾美A.Nakata

目次

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1:夫婦間の贈与って…

(1)そもそも贈与って何?

まず、“贈与”とは、思いきりくだけた言い方をすると“プレゼント”のこと。そして、プレゼントが高価であれば、もらった側が贈与税という税金を支払わなければならない可能性があるのです。

具体的には、年間110万円までの贈与には税金はかかりませんが、110万円をオーバーすると、税務署に申告して贈与税の支払い義務を負う可能性があります。

(2)夫婦間贈与の特例と非課税枠は?

妻が専業主婦という家庭では、妻が毎月、夫から生活費を受け取っており、月に10万円受け取っているとすれば、その額は年間で110万円をオーバーしてしまいます。

形式的に見ると、このケースでも贈与税が発生してしまいそうですが、もちろん、そんなことはありません。国税庁のホームページでは、“贈与税がかからない場合”として、以下のケースを挙げられています。

<夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの>

つまり、夫婦間で生活費や子どもの教育費として受け取ったものは、贈与税の対象とはならないのです。

このほか、長年連れ添った夫婦に対しては、不動産の贈与についても特例が定められています。結婚してから20年経っている夫婦の間であれば、自宅として使っている不動産を贈与したり、新しく自宅を購入するための費用を贈与したりしても、2,000万円までは贈与税がかかりません。

通常の非課税枠は110万円までなのに、2,000万円まで認められるなんて、かなりお得な制度のように思えますよね! ただし、この夫婦間の不動産贈与の特例は、利用するとかえって損する場合もあるんです。詳しくは後ほど解説します。

 

2:夫婦間贈与で気を付けるべきポイント5つ

通常は年間で110万円を超える贈与に対しては贈与税が発生します。しかし、夫婦間ではさまざまな例外があるのは前述した通り。

ただ、ここまでの説明では、「夫婦間の贈与でどのようなケースで贈与税を支払う必要があるのかいまいちよくわからない」という人が多いのではないでしょうか。そこで、円満相続税理士法人の橘慶太先生から、より具体的な事情について教えていただきました。

Q&A形式で、気になることについて、お答えいただきます。

(1)内縁関係は税金面では“夫婦”の扱いにならない

Q.夫婦間では年間110万円を超える贈与があっても、贈与税の対象にならないケースがあるとのことですが、入籍していないだけで夫婦同然の生活を送っている内縁関係でも同様なのでしょうか?

橘先生:「税金の世界では、内縁関係は夫婦ではなく他人同士という扱いになるので、夫婦間では非課税となるケースでも、内縁関係では贈与税が発生するものと考えられます」

(2)結婚指輪には贈与税はかからない

Q.夫婦間で生活費や教育費のためのお金をやりとりしても、贈与税はかからない、というのは常識的に理解できます。では、夫が妻の誕生日に、120万円の指輪をプレゼントした場合、妻は税務署に申告し、贈与税を支払う必要があるのでしょうか?

橘先生:「夫婦の収入の状況にもよりますが、課税対象になる可能性はあります。ただし、高価なプレゼントの中でも、結婚指輪は対象外です。110万円を超えるものでも、贈与税を支払う必要はありません。

入籍前に贈られた結婚指輪の場合、その後、入籍したかどうかがポイントになります。晴れて入籍すれば申告・納税の義務はありませんが、万が一、破談になり、そのまま結婚指輪を受け取ったままの場合は、課税対象になるでしょう」

(3)こつこつ貯めたへそくりが妻のものにならないことも!?

Q.夫婦間の贈与でよくトラブルになったり、一般人が勘違いしていたりするケースがありましたら教えてください

橘先生:「夫の死後に、妻がこつこつ貯めたへそくりが発覚して、トラブルになることはあります。

夫が会社員、妻が専業主婦で、妻が生活費として夫から受け取ったお金の一部を、自分の銀行口座にへそくりとしてこつこつ貯め続けて、それが数千万円にものぼったとしましょう。

その数千万円は、夫から妻に渡ったお金ですが、夫が知らないうちに貯めこんだものなので贈与にはあたらず、夫の財産という扱いになるのです。

ですから、旦那さんが亡くなった場合、その数千万円は妻が自由に引き出して使うことはできず、さらに相続税の課税対象にもなります」

せっかくこつこつ貯め続けたのに……。夫に黙ってへそくりするよりも、夫婦間でしっかり合意して、年間110万円以内の贈与を受け続けるほうが妻にとってはお得だったということですね。

(4)夫の愛情が水の泡に!?

Q.へそくり以外にも、夫婦間の贈与にまつわるトラブルとして、どのようなケースがあるのでしょうか?

「夫が妻のために貯金していたようなケースですね。

例えば、夫が妻名義の銀行口座に、自分のお金をこつこつと振り込み続けていたとします。その妻名義の口座の届出印を夫が管理して、夫が勝手に貯金しているのであれば、上記のへそくりと同じで贈与にあたらず、夫の財産として扱われてしまう可能性があるのです」

夫の行為自体は、素敵な夫婦愛エピソードのようにも思えますが、黙ってやっていると、そういったリスクもあるのですね。

(5)夫婦間の不動産贈与の特例は使うと損!?

Q.ところで、結婚してから20年経っている夫婦間では2,000万円までの不動産贈与の特例があるとのことですが、これって税金がかからないから、お得なことですよね?

橘先生:「いいえ、そうとは限りません。生前贈与ではなく相続の場合は、実は夫婦間では最低でも1億6,000万円まで非課税なんです。つまり、この特例をわざわざ使わなくても、配偶者の死後、不動産を相続しすれば税金はかかりません。

しかも、不動産を生前贈与した場合は、不動産取得税、登録免許税がかかります。他方、相続では不動産取得税がかからず、登録免許税も生前贈与の5分の1です。トータルで見ると、不動産贈与の特例を使うほうが損だといえるでしょう」

相続のほうがお得なのですね。とすれば、不動産贈与の特例の存在意義がよくわからないのですが……。特例を使うほうがお得なケースはあるのでしょうか?

橘先生:「お金の損得よりもお気持ちでこの特例を使うかたはいらっしゃいますね。例えば、自分が死んだ後に、配偶者の住まいを確保したい……といった配慮です。

生前贈与よりも相続のほうが、たしかに税金面ではお得なのですが、配偶者以外にも、子どもなど相続人がいる場合、相続人の間で揉める可能性は否定できません。

例えば、夫が死亡し、夫婦で住んでいる家が夫名義だとします。親子仲が円満であれば妻がそのまま住み続けることができるでしょうが、もしそうでない場合は、“持分を寄こせ”という厄介な話になるおそれがあります。

そういったトラブルを事前に回避する手段として、不動産贈与の特例は使えるでしょう」

 

3:夫婦間の贈与税…無申告がばれるとどうなる?

続いては、夫婦間の贈与税について、知らなかったなどの理由で無申告になってしまったときなどについて、引き続き円満相続税理士法人の橘慶太先生に、Q&A形式で、疑問点にお答えいただきます。

(1)そもそも無申告は税務署にバレるの?

Q.1年間で110万円を超える贈与を受けた場合、贈与を受けた側が税務署に申告し、贈与税を支払う必要があると聞きました。ただ、この手続きを知らずに申告しなかったり、あるいは、税金を支払いたくなくて申告しなかったりする人もいるかと思います。これって税務署にバレる可能性があるのでしょうか?

橘先生:「不動産の贈与は、法務局に名義変更の情報が登録されるので、税務署に筒抜けです。他方、金銭や物品などは、不動産よりも把握しづらいのですが、金銭であれば預金口座の状況で税務署から目を付けられる可能性はあります」

(2)無申告が税務署にバレたらどうなる?

Q.もし、申告していないのが、税務署にバレたらどうなるのでしょうか?

橘先生:「無申告が発覚すると、無申告加算税が課税されて、本来、支払うべきだった税金の最低でも1.1倍を支払う義務が発生します。

この最低の1.1倍というのは、税金の手続きについてまったく知らなかったというケースです。知っていて申告しなかったという悪質なケースでは、最大で1.4倍の申告加算税が課税されます」

(3)税務署の調査官に対して言い逃れは不可能?

Q.うっかり申告しなかったのと知っていて申告しなかったのでは、扱いが異なるのですね。では、本当は税金の手続きについて熟知している人が、「いや~、夫婦間での贈与で税金が発生するなんて、一切知らなかったんですよ~。1.1倍支払うから勘弁してね」とシラばっくれた場合はどうなりますか?

橘先生:「税務署の調査官がAさんに対してさまざまな質問をし、その受け答えによって本当に知らなかったのかどうか判断します。

調査官は過去の膨大な脱税ケースから、どのような言い逃れをするのか想定したうえで質問してくるので、いくらごまかそうとしても答弁を重ねるうちに必ずつじつまが合わなくなるでしょう」

税金のプロをだまそうとしても、そううまくはいかないのですね。だまそうとしたことで余計に悪質だと認定されれば重いペナルティを課されるだけ……。脱税のために下手な小細工を打つよりも、はじめから正直に申告したほうが賢明だといえそうです。

 

4:まとめ

夫婦間で高価なプレゼントや大金のやりとりでは、年間110万円を超えないように要注意! もしオーバーした場合、税務署に申告・納税を行いましょう。

 

【取材協力】

橘慶太・・・円満相続税理士法人代表。国内最大手の税理士法人山田&パートナーズを経て、平成29年1月に表参道相続専門税理士事務所を設立。平成30年より法人化に伴い、円満相続税理士法人に商号を変更。上場企業の創業家や芸能人を含め、多くの相続申告を手がけるほか、相続税セミナーの講師としても活躍中。税理士の使命は、難解な法律や税金をできる限りわかりやすく伝えることだと考えている。

 

【参考】

No.4405 贈与税がかからない場合 – 国税庁