恋のなやみに効くメディア

「不倫とは何か」浮気の心理や本当にあった修羅場まで徹底解説!

中田綾美

中田綾美A.Nakata

目次

隠す

1:「浮気」と「不倫」は違う?それぞれの定義は?

(1)「浮気」とは?

まずは、“浮気”の定義について、小学館デジタル大辞泉をチェックしてみましょう。

【浮気/上気】

1 一つのことに集中できず心が変わりやすいこと。また、そのさま。移り気。

2 異性に心をひかれやすいこと。また、そのさま。多情。

3 配偶者・婚約者などがありながら、他の異性に気がひかれ、関係をもつこと。

4 心が浮ついて、思慮に欠けること。また、そのさま。

5 浮かれて陽気になるさま。また、そうなりやすい気質。

(出典:小学館デジタル大辞泉)

“浮気”というのは、男女関係に限らず、“気持ちが浮つくこと”に広く用いられるのですね。

(2)「不倫」とは?

では、“不倫”の定義はというと……?

【不倫】

道徳にはずれること。特に、男女関係で、人の道に背くこと。また、そのさま。

(出典:小学館デジタル大辞泉)

“不倫”は“浮気”より意味が限定的。また、“人の道に背く”というあたり、タブー色が濃い目なのがわかります。

一般的な感覚としては、“浮気”は恋人同士でも夫婦でも使われ、またエッチやキスはもちろんのこと、気持ちの問題も広く含む言葉。

他方で、“不倫”は当事者の一方、または双方が既婚者で、かつ一線を越えた……つまりカラダの関係があることを意味する言葉。

そういう違いがあるといえるのではないでしょうか。

(3)実は「浮気」も「不倫」も法律用語ではない!?

さて、ここ数年、既婚者が配偶者以外の異性と親密になる“不倫”のニュースが世間を賑わせています。

不倫の話題では、よく“やっぱり妻(夫)とは離婚するの?”とか、“その場合、慰謝料はどうなるの?”など、法律問題に関心が向けられます。しかし、実は“浮気”も“不倫”も法律用語ではありません。

裁判などで離婚や慰謝料について争われる場合には、浮気や不倫ではなく、“不貞”があったかどうかが問題となります。ただ、“不倫”と“不貞”は、法律用語がどうかという違いはあれど、内容的には似たもの同士と考えて差し支えないでしょう。

2:不倫とは?弁護士が徹底解説

では、弁護士の林誠吾先生に取材した、不倫にまつわる法律問題について解説していきます。

(1)民法における不貞行為とは?

民法770条1項1号には“配偶者に不貞な行為があったとき”に、夫婦の一方が離婚の訴えを提起できると規定されています。つまり、不貞行為は離婚事由となるのです。

ここでいう不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意志に基づいて配偶者以外の者と性的関係、つまり肉体関係をもつことをいいます。

(2)不倫した側から離婚請求できる?

かつて裁判所では、不貞行為を行うなど、離婚の原因を作った側(有責配偶者)からの離婚請求を認めていませんでした。そのような身勝手な振る舞いは許されないという判断だったのです。

しかし、近年では、すでに夫婦関係が破綻しているのに離婚できないのもかえって不都合だということで、一定の条件のもとでは有責配偶者からの請求でも認めるようになっています。

有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかは、別居期間の長さ、未成熟な子供の有無、そのほか、不倫された側の精神的・社会的な状況などで判断されます。

(3)不倫はどこから? キスも不貞になる?

上述のように、“離婚事由”としての不貞行為は肉体関係に限定されます。

他方、慰謝料請求が認められるかどうかの争いにおける“不貞”は、もう少し広く解釈されています。

後者では、肉体関係に限らず、“婚姻関係を侵害する可能性のある行為”が広く含まれるのです。

たとえば、キスだけなら離婚事由としての不貞行為には当たらないものの、慰謝料請求権が発生する不貞行為には当たる可能性が高いといえます。

慰謝料請求権が発生する“不貞”は、俗に言う“不倫”とかなり近いニュアンスだととらえていいでしょう。

(4)不倫の証拠には、どのようなものが使えるか?

“ラブホテルに入っていく姿”をとらえた写真であれば、有力な証拠になりえますが、シティホテルなど、一般的な宿泊施設の場合は、やや証拠として弱くなるので、写真のほかに宿泊者名簿などが必要です。

当事者がシラを切っている場合、決定的な証拠を突き止めるのは簡単ではなく、さまざまな証拠や情報を集めて、不貞行為があったことを立証していきます。

たとえば、手つなぎ写真やパンツをかぶっている写真……。これだけでは、肉体関係があったことの証拠にはなりにくいものの、そのほかのさまざまな証拠とあわせれば、“婚姻関係を侵害する可能性のある行為”があったと認められる可能性はあります。

証拠として、最近ではメールやLINE、SNSでの記録、たとえば、ホテルに行く約束や、実際に行ったことを示すやりとりがよく用いられています。

(5)不倫にも時効はある?

まず、不倫があってから、20年経過すると時効が成立して、その行為について法的責任は問えなくなります。

また、加害者、つまり不倫相手を知ったときから3年経過したときも、時効成立です。この“加害者を知った”とは、“相手の名前と住所”を知ったときと解されています。なんとなく女の影がある……というだけでは、“加害者を知った”に当たりません。

(6)不倫の慰謝料は? 相場はどれくらい?

相場としては、200万円~300万円になります。ただ、不貞行為の慰謝料がいくらになるかは、さまざまな事情が考慮されるので、一概に金額を決めることはできません。

「離婚に至ったかどうか」は、慰謝料額を大きく左右する要素で、離婚にまで至らなかった場合は、50万円ほどになることもあります。

そのほかの事情としては、不貞行為の相手との交際期間の長さ、婚姻期間の長さ、子供がいるかどうか、そして、現実問題として、裁判外の示談においては、支払う人の収入なども考慮することになるでしょう。

(7)既婚男性に独身女性がだまされた場合は?

「妻とは離婚するから」という言葉を信じて独身女性が既婚男性と関係をもった場合、いくら「私は不倫のつもりはなかった」と言い訳しても、残念ながら法的責任を免れることはできません。

妻から訴えられれば不貞行為が成立し、慰謝料請求が命じられる可能性が高いでしょう。

他方、婚活サイトで知り合った男性が実は既婚者だったとのちに判明した……という場合には、女性側に法的責任は生じません。

ただし、既婚者だと知った以降もズルズルと関係を継続してしまえば、やはり不貞行為が成立するものと考えられます。

3:「浮気・不倫をする」心理・背景

愛し合って結婚したはずなのに、人はなぜ浮気・不倫に走るのでしょうか? ここからは法律問題から一旦離れて、不倫の実態についてご紹介したいと思います。弁護士の林誠吾先生からお話をうかがいました。

(1)不倫の根源にあるのは“寂しさ”?

「あくまで私がこれまでご相談を受けてきた経験での話ですが、不倫問題が起こる家庭では、夫婦のコミュニケーションが不足しているように感じます。

たとえば、共働きで妻も夫も日々仕事に家事に育児に追われ、夫婦でゆっくり会話を楽しむ余裕もない。そのような状態では、夫婦間で心のすれ違いが生じ、やがてその寂しさや溝が深まって、何かのきっかけで不倫に走ってしまう……というケースが少なくないように思われます」(以下、「」内は林誠吾先生)

(2)不倫のハードルは昔よりも下がっている?

「ネットやスマホの普及により、男女を問わず、不倫のハードルは昔よりも下がっているかもしれません。

たとえば、出会い系やマッチングアプリで気軽に出会えてしまう。

また、出会い目的でないSNSでも、簡単に連絡先の交換が可能です。さらに、ソーシャルゲームを通じて、見知らぬ男女が懇意になったり、Facebookなどで元カレ、元カノと再会したりすることも、不倫の増加につながっていると考えられます」

(3)実はセックスレスの悩みは女性のほうが深刻!?

――夫婦のセックスレスが不倫のきっかけになることも多いのではないでしょうか?

「はい。そうですね。……実は、夫婦間のセックスレスを原因とする不倫は、女性で多いような印象があります」。

――えっ、私のイメージでは逆なんですが!? 妻が拒否するから夫が外で発散するケースが多いものだとばかり思い込んでいたのですが……。

「ちょっと語弊があるかもしれませんが、男性の場合、お金さえ払えば性の不満は解消できるといえます。いわゆる風俗店で発散して、後腐れのない関係で済ませることが可能です。

もちろん、婚姻関係にある男性が風俗店を利用して、性交ないし性交類似行為を行うと、一般的には不貞行為に該当すると考えられていますので、それはそれで問題がないわけでもないのですが……。

他方、女性向けには、そのような性産業が発達していないので、一時的な関係で済まず、泥沼の不倫に陥ってしまうおそれがあります」。

――夫との肉体的つながりがない寂しさを不倫で埋め合わせようとする……。もちろんやってはいけないことなのですが、なんだかとても切ない話ですね。

4:浮気・不倫の修羅場エピソード

最後に、「浮気・不倫は絶対にやってはいけない」という他山の石とすべく、修羅場エピソードについても、林先生から教えていただきました。

(1)本当にあった“自宅鉢合わせ”事件

「芸能人でも話題になったことがありますが、家人の留守中に不倫相手を自宅に連れ込んで行為に及んでいたら、配偶者が帰宅して……というケースは本当にあります。

通常、不貞行為の決定的な証拠というのは、なかなか押さえられないのですが、こうした“鉢合わせ”に限っては、もう言い逃れのしようがありません」

(2)不倫相手との乱闘で警察沙汰事件

「不倫の証拠集めはどちらかというと、女性のほうが積極的な印象があります。たとえば、一晩中でも尾行して、夫がラブホテルに出入りする写真を撮影するなど、探偵顔負けです。

こうした証拠集めに関する修羅場として、こんなエピソードがあります。奥さんが旦那さんを怪しいと思って尾行していたら、案の定、女性とふたりきりになって、挙句には駅でイチャイチャし始めたんです。

それを見た奥さんはカッとなり、いきなり相手の女性に殴りかかってしまい、警察沙汰に……」。

――うーん。奥さんの気持ちはわかりますが、やっぱり暴力はよくないですよね。

(3)仕返しはやめましょう

――上記の警察沙汰事件以外にも、浮気相手に制裁を加えようとして修羅場になるケースはあるのでしょうか?

「よくある仕返しは、勤め先や実家に不倫の実態を暴くというものですね。たとえば、不貞の証拠を送りつけたり、写真をバラまいたりすることがあります。

ただ、弁護士の立場からは、こうした仕返しは絶対にやめるようにお願いしたいです。

確かに、配偶者や不倫相手に対して怒りや憎しみを感じてしまうのは当然のことなのですが、自分で仕返しすると、相手から逆にプライバシー侵害や名誉毀損で訴えられて、立場を悪くすることになりかねません」。

――相手にぎゃふんと言わせたいなら、自ら手を下すのではなく、弁護士に相談して、法的に手続きを進めたほうがいいということですね。

気持ちがちょっと揺れ動く“浮気”であればまだかわいいもの!? 不倫や不貞には絶対に手を染めないようにしましょう。

 

【取材協力】

弁護士法人みずほ中央法律事務所 弁護士 林誠吾